木曜の男

木曜の男 (創元推理文庫 101-6)

木曜の男 (創元推理文庫 101-6)

G.K.チェスタトンの『木曜の男』を読んだ。疲れているし、よく眠ったし、軽い感じの推理小説を読みたかったわけである。吉田健一の翻訳にも心惹かれた。何度も書いていることだが、吉田健一は事実上ネイティブスピーカーである。この人の翻訳に信頼を寄せたきっかけは、パトリシア・ハイスミスの『変身の恐怖』であった。
しかしながら、この『木曜の男』は、推理小説というより、ジョークというかシュールというかそんな感じ。特に終わり方なんて、不思議な感じは、吉田健一の代表作『金沢』に似ている。ひとつ間違えば、悪夢みたいな、骨と肉の間をくすぐられているような妙な味わいで、こういう感じは、吉田健一の好みだったんだろう。わたしは『金沢』の方が好きです。