- 作者: ジェイムズ・D・テイバー,伏見威蕃,黒川由美
- 出版社/メーカー: ソフトバンククリエイティブ
- 発売日: 2006/05/20
- メディア: 単行本
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このところ、西欧社会でも、キリスト教を神聖視するのはそろそろやめて、冷静に検証してみましょうよ、という気分になりつつあるのかもしれない。キリスト教原理主義者みたいな人たちが大航海時代あたりから、世界に振りまいてきた災厄の数々にはうんざりさせられるし、今になってそれが弱まる気配もないとあっては、ある意味当然な気もする。
すくなくとも私の目には、この書は考古学と文献の面から、初期のキリスト教団のあり方を曇りない目で明らかにしていると思えた。
興味深かったのは、原初キリスト教がいつ原初でなくなるのか。原初といっても少なくとも100年や200年、あるいは500年くらいは、もともとの性格を持ち続けたのかと思いたいところであるが、驚いたことにイエスの死後30年たたないうちに、その性格が失われている。
生前のイエスに一面識もないパウロが、イエスの幻を見たといって教団に加わり、熱心な布教の途中で、教義を自分流に上書きしている。感想としては、パウロは教団に途中から紛れ込んできた狂信者に見える。もっとも彼がいなければ、キリスト教が世界宗教になりえたかどうか分からないが、そもそも元のキリスト教に世界宗教になるほどの内容があったかどうか疑わしい。
いずれにせよ原初のキリスト教、つまりイエスが実際には何を伝えようとしていたのか、我々はほとんど知りえないというのが実態らしい。新約聖書ですらパウロの死後書かれている。