損ができなくなったら

「損ができなくなったら男はおしまい」と、昔、安部譲二が言っていた。このひとの本は読んでいないけれど、この言葉は記憶に引っかかっている。
口で言うほど簡単なことではない。目の前に「得」がぶら下がっているのに、「損」の方をとるのは、それがほんの小さな「損」でもなかなかできないし、それにその選択には合理的裏づけがない。たいていの場合は「得」の方をとるだろう。
それでもときどき、この言葉について考えてしまうことがある。
正しいのか間違っているのか、答えが出ない言葉について考えてみるのも、ときには無駄なことではないんだろう。