
- 作者: 佐藤優
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2005/03/26
- メディア: 単行本
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佐藤優は外務省のキレモノのくせに同志社大学神学部出身のノンキャリアなのだそうだ。その設定が(って、事実なんだが)よい。なんか面白いことが起こりそうな気がするじゃないですか。そして、現に起きたんだけれどもね。
この本を読んでいて目からうろこが山ほど落ちてしまった。そのせいでいろんなことが見えてきてしまう。たとえばサハリン2の問題は、このツケが回ってきているな、と思えてしまう。ロシアのわがままとかいう問題ではないので、一連の事件をロシアサイドから見ていると、あるシグナルととられても仕方ないはずだ。というか、官邸サイドは本気でそのシグナルを送ったのかもしれない。
ホリエモンの逮捕なども、なるほどと、腑に落ちてしまう。だって、いまだになんで逮捕されたのかよくわからないのだ。ところで鈴木宗男が何で逮捕されたか、いま憶えている人いるだろうか?わたしは忘れていた。というか、実のところ、この本を読んでもよく思い出さない。「疑惑のデパート」とまで揶揄されていたはずだが、金の面ではともかく、外交ではかなりすぐれた政治家であったようだ。
小泉純一郎という総理大臣はなかなかちゃんと仕事をしたと思っているが、外交では変なことになったという気がしている。郵政民営化が象徴しているように内政の方向性ははっきりしていた。官僚の力を極力削いで官邸主導の小さな政府にする。そして原則として規制のない競争社会にするということだ。
ところが、外交ではそういう方向性が見られなかった。というか、その方向性を靖国参拝などがしめしているのならちょっとまずいなと思うしだいである。
思い出すのは、靖国参拝が話題になったころ、「プーチンと一緒に参拝すればいい」この佐藤優氏がと発言したことだ。そうすると靖国参拝の外交的意味ががらりと変わる。うわさどおりキレル男だなと思った瞬間だったが、ただ、それは当時、小泉純一郎の靖国参拝には外交的意味はないと考えていたからだ。こちらの意に反して、小泉外交の基本は靖国参拝だったとなると、ぜんぜん話が違ってくる。
と、こういう風に小泉さんの外交はいまひとつ掴み所がなかった。こないだもカザフスタンとウズベキスタンに行ってましたな。旧ソ連のロシア以外の国々と連携するのは、重要と思うのだけれど、それだと鈴木宗男〜佐藤優ラインを排除した意味がよくわからないし、全体の戦略は見えにくい。
こういう風な外交だった小泉さんの後に「美しい国」とかいう安倍さんが総理になるのは、方向性としてよくないと思う。どちらかというと麻生さんになってもらいたい。
話がそれたけれど、とにかくそんな具合に現在の問題に直リンクしてくる面白い本であった。読んでおいて損はないし、読まないと損するかもしれない。