キャリヤ

厚木カワサキから電話がかかってきた。頼んでいたキャリヤが入荷した。
「まだ600kmくらいしか走っていないんです」
と、自嘲気味にいうと、あちらの方がため息まじりだった。売った客がバイクに乗らないと、バイク屋としてはがっかりなものなのだろうか。
そういう意味では、黒部のレッドシティーでは、何かと面倒をかけた。ダートでこけて気を失っているところを、(正確に言うと、はっと気がつくとダートで転倒していたところを)軽トラで引き取りに来てもらったりしていたが、そういう客のほうがありがたいものだろうか。ロシアからもメールしたりした。
たぶん、どっちにしても困った客なんだろう。
バイク屋という商売も考えてみると不思議な商売だ。たとえば、街の電気屋さんが量販店に駆逐され、町の本屋さんがネット書店に取って代わられても、バイク屋がなくなるとちょっと困る。
タイヤ交換までは自分でやるけど、チェーンカッターとかは買い揃えるつもりがないし、ブレーキ液とかもお願いしているし、エンジンの分解とかは全くお手上げ。そういうの全部自分でやってしまう人いるからなぁ。バシシさんとか、アフリカまで行くのだから当然といえば当然だけど。
近頃の売れ筋のバイクは、買った後のカスタムを楽しむものらしく、TWにしてもマジェやスカブやフュージョンにしても、いじっていなくても、いじろうともしない人は少ないのではないか。イメージとして「どこまでも走っていく」というバイクではない気がする。今の世の中、そんな時間も道もないのかもしれない。