信用の問題

もう少しだけ考えてみることにする。
フジテレビが、「連立構想を持ちかけたのは小沢一郎だ」という方向に世論を誘導しようとしたのはなぜだろうか。おそらく、連立構想が世論の反感を買うと、あらかじめ予想されたからであろう。連立構想が実現すればかまわないが、実現しなかった場合に備えて、あらかじめ口裏を合わせていたのだろうか。
しかし、党首会談を持ちかけたのは、総理大臣の方なのは明らかなのだから、その点からだけでも、小沢一郎が連立を持ちかけたとするのは無理である。
無理な世論誘導は、失笑を買うだけですめばよいが、信用を失う結果になるのは明らかだけれど、それについてはどうでもよいのだろうか。
それから、昨日の話だけれども、主旨が伝わらなかったかもしれないので、もう少し突っ込んで言うと、一国の総理大臣が、テレビカメラの前で、「連立を持ちかけたのはどちらですか?」と質問されているのに、うにゃむにゃ言ってにやにやしていていいんだろうか。少なくとも、自民党党首と民主党党首ふたりの間では、どちらがそれを持ち出したかは明確なはずである。もし誤解されているとしたら、それを正すのが礼儀というものである。「誤解されたままのほうが都合がいいからそのままにしといてやれ、エヘヘ」みたいな態度が、総理大臣のとるべき態度かどうかということを、昨日は言ったわけ。
もし、次に重要な議題があって党首会談を申し入れたときに、一般論として、このような態度をメディアに対して取った総理大臣の誘いに、野党党首が応じるだろうか?二度と応じないと思うが違うだろうか。党首同士の信頼関係をぶち壊しているし、総理大臣としての信用をみずから踏みにじっているということに気がつかないんだろうか。そういうのを、下々の言葉では「ペテンにかける」というのである。
フジテレビに「ジャーナリストとしての信用」なんて言っても鼻で笑われるのは当然としても、総理大臣まで信用なんて関係ネエと思っているとなると、さすがに心配になる。
それにしても、民主党のマスコミ対策はなってない。
今回、「連立構想は小沢一郎発」報道をしたのはフジテレビなんだから、他の民放三局で実情を説明すればよかったのである(そのとき、連立に乗り気だったなんておくびにも出したらだめですよ)。喜んで飛びついただろう。なにも辞任会見することはない。誰か止めなかったのか。
菅直人年金問題のときもそうである。同じ年金問題が浮上したとき、小泉純一郎は「人生色々、仕事も色々」で乗り切ってしまった。一方で、菅直人は頭を丸めてお遍路に出てしまった。
小泉純一郎は、年金をどこかの会社に払わせていたのである。菅直人は一ヶ月滞納していただけ。しかも、後で事務手続きのミスと分かったし、今となっては、厚生労働省の意図的なリークであることは間違いないと思われる。
だけど問題は、小泉純一郎の場合でさえ、そんな程度のことは国民はどうでもいいと思っていると気がつかない点にある。
今回のことでも、よほどのバカでなければ、党首会談を持ちかけた側が、連立政権を持ちかけられたとは思わない。その構想に小沢一郎が乗り気であったかどうかは誰も知らない。事実は、党首会談を持ちかけられて、連立の話題になって、会談を中断して党に持ち帰った結果、拒否した、それだけである。であれば、「連立構想は小沢一郎発」報道は、フジテレビの命取りになりかねなかった。だからこそ、辞任会見のあと、あわてて特番を放送していたのである。
改めて言うけれど、今の世の中、誰がテレビや新聞の報道がフェアだと思っているだろうか。どうせプロパンダ合戦なんだから、売られた喧嘩は買え。両陣営でプロパガンダ合戦をしあってこそ、現実的なフェア精神が生まれるというものである。