懸念していることはふたつ

 麻生政権が発足してからすでに4ヶ月。リーマンブラザースが破綻したのもほぼ同時だけれど、「経済の麻生」といいながら、彼はこの間、ほぼ何一つ手を打っていない。
 それだけでなく、過去7年間にも渡って自分たちの政党が実施してきた政策を、何のビジョンも示さないまま、ひっくり返そうとしている。行政改革大臣を務めてきた渡辺喜美が党を去る事態になってもまだ、麻生総理はわたりの禁止を明言しない。これでは国民の気持ちは離れる。
 漢字の読み間違いは問題ではないと書いたが、「踏襲」を「ふしゅう」と読み間違えるのは、かつて「ピカソ」を「ぴかり」と読んだ糸山英太郎以来の伝説ではある。
安倍、福田、麻生とつづく自公政権の迷走ぶりを目の当たりにして、高見の見物を決め込む民主党の戦略もよく分かる。
しかし、政権交代を視野に入れなければならない選挙を前にして、ハッと気がついてみると、民主党もこれといった処方箋を示していないことに選挙民は気が付かないだろうか。
今日のニュースでは、
全国郵便局長会(全特)の会合に出席した小沢氏は「次の選挙で政権を獲得できれば(郵政民営化)抜本見直し法案を国民新党とともに作って成立を期す」と強調した。会合では、全特の浦野修会長が次期衆院選で民主、国民新両党を全面支援する考えを表明。国民新党綿貫民輔代表らも出席した。 
ということだ。
 郵政民営化小泉純一郎にとっての改革のシンボルなので、それを野党の小沢一郎がくつがえすことに問題はない。
 だが、懸念していることはふたつ。
 郵政と道路公団の民営化、天下りの禁止等のことで、官僚と族議員が如何に徹底した抵抗を示すか私たちは目の当たりにした。「官僚政治を打ち砕かなくては日本に未来は無い」といいながら、小沢一郎は具体的にどんなビジョンを持ち、何を実現しようとしているのか、それが見えない。
 もう一点は、この動きが全国郵便局長会の集票を目当てにしたものであることはあまりにも明らかで、ここには、古いタイプの選挙屋としての小沢一郎が顔をのぞかせていること。民主党が勝利した前の参議院選挙においても、小沢一郎の手法は、地方をまわり地道に組織を固めるやり方だったと記憶している。
しかし、これでは、自公政権民主党ともに、
郵政民営化見直し、
官僚制度改革に消極的、
金融危機にこれといった処方箋を持たない、
という点でどんどん接近してきていないか。
そうなれば、組織票は固められても、浮動票をを失ってしまう。
 もちろん、自分たちで決定して推進してきた政策をこれといった理由もなく、選挙も経ないで変更してしまった(その行為はとりもなおさず「変節」である)麻生政権の態度は致命的であるから、必ずその批判票は存在するが、争点が曖昧なままなら、それが民主党に向かわない。
今の世界恐慌を乗りきり、1940年以来のアンシャン・レジームを変換するためには、推進力となる勝利が不可欠だと思っている。たとえば、小泉政権下の郵政選挙のような。
 全国郵便局長会の票を当てにするようでは、少しせこいのではないか。麻生太郎は、民主党が考えるほど馬鹿ではないという気がする。