「母なる証明」、「駅前弁当」

母なる証明」という韓国映画を観てきた。
韓国も日本に負けず劣らぬ母性社会だと思っているので、ある程度のおどろおどろしさは覚悟していたが、それは杞憂におわって、テンポのよい演出で展開するサスペンスドラマだった。
謎が明らかになっていくプロットの進み方は西川美和監督の「ゆれる」に似ているかも。
邦題にある‘証明’は、母であることを証明せざるえない主人公の切迫した心理がストーリーの原動力であることを示唆しているのだと思う。
主人公の罪の意識が作品の裏側にずっと貼り付いているテーマなのだろう。この主人公にとっては母であること自体が罪であることと同じなので、その罪から逃れるためなら他の罪は罪のうちにも入らない。そういう主人公の罪悪感の重さがラストエピソードによく顕れている。テーマが母性を超えて人間性であることが普遍的な説得力を獲得している原因だと思う。
そのあと銀座シネパトスで「駅前弁当」。
小林信彦が‘名作という評判’と書いていたので、これは四の五の言わず観にいくことになっている。
銀座シネパトスの今回のプログラムでは、どういうわけか平日に社長シリーズ、土日に駅前シリーズという番組になっているので、地方の勤め人は社長シリーズが見られない。せっかく二本立てなんだから、社長・駅前ワンセットで組んでくれればいいのにな。
で、「駅前旅館」「喜劇・駅前団地」につづいて駅前シリーズ。
今回のは「団地」と同じく61年なのだけれどカラーになっている。
森繁久彌伴淳三郎フランキー堺淡島千景淡路恵子というレギュラー陣に加えて、花菱アチャコ柳家金悟楼という豪華キャストが花を添えている。
「駅前旅館」、「駅前団地」に較べるとかなり喜劇色が強くて、完全にコメディーと割り切って森繁久彌伴淳三郎のコンビのおかしさを際立たせようとするシナリオだと思う。私としては「駅前団地」のラブ・コメディー的な要素がなくなってしまったのが少し残念に思うけど、娯楽としてはこちらの方がもりだくさん。
花菱アチャコ柳家金悟楼は、なるほどこの人たち人気があったの納得できるなぁと思った。
1961年当時の浜松の雰囲気が味わえるのも楽しみの一つ。映画の画面でも空気のきれいなのがわかる。あのくらいのインフラでよかった気もするのは年齢かもしれないけど。
森繁久彌の特集はブームらしく、来月の7日から20日、今度は新文芸座てふところで、日替わり二本立ての特集がある。
9日の「夫婦善哉」、11日の「猫と庄造と二人のをんな」、19日の「警察日記」は見てみたい気がする。