『歌うクジラ』、『ウォッチメーカー』

 菅直人首相が、自民党の谷垣総裁に入閣を持ちかけたそうだ。谷垣氏が入閣したからといって、それが原発事故や震災復興に役立つだろうか?
 こうした災害が起こったとき、被災者に手をさしのべようとする人がいる一方で、うまく利用しようとする人がいるのも事実だ。
 震災発生後、わずか10日だが、わが国の首相は、早くも態度をはっきりさせたようだ。

歌うクジラ 上

歌うクジラ 上

歌うクジラ 下

歌うクジラ 下

 村上龍の『歌うクジラ』を読み終えた。
 旅の物語。旅がこころにない人は腐る。
 異なる価値観を横断するとき、自分の尊厳を保とうとすれば、他者に自分を説明しなければならないし、他者も尊重しなければならない。
 その意味で、棲み分けられた社会に閉じこもり、仲間内にしか通用しない言葉を使う人々と、敬語を使う主人公の対比は印象的。
 こう書くと、この言葉の囲い込みみたいなことが、いま日本のネット社会で起こっていることの、風刺になっているととられるかもしれないけれど、そういうことも含めて、このぶっ飛んだSFみたいな世界が、近未来的というには、あまりにもスリリングに、現代と肌を接していることが、この小説の迫力なんだろうと思う。
 芥川賞二作品のあとに読むと、やっぱり格が違うんだなぁと思う。
 電子書籍で発売されたことも話題になった本だが、この分量をモニターで読むのは、目につらい気がする。電子書籍を持っていないのでわからないが。
 恩田陸の『中庭の出来事』の時にも書いたけれど、でも、ネットで小説が発表されるのは、それはそれで面白いのではないかと思っているのは、本だと、もうすぐ終わるぞみたいな、始点と終点がわかっちゃうんだけど、ネットにはそれがないし、物語が複数に分岐していくことも可能だし、複層をなして、どこから読んでもよいという仕掛け方もできる。
 たとえば、ある小説の続編を書くとき、第一作の途中からサイドストーリーとして分岐させたりもできるわけだ。
 週刊文春のインタビューで、アンソニー・ホプキンスがiPadに夢中だとか。
 本は本、電子書籍電子書籍で、パイを大きくできるのかもしれない。
 
ウォッチメイカー〈上〉 (文春文庫)

ウォッチメイカー〈上〉 (文春文庫)

ウォッチメイカー〈下〉 (文春文庫)

ウォッチメイカー〈下〉 (文春文庫)

 ジェフリー・ディーヴァーの『ウォッチメーカー』も読んだ。
 久しぶりにシリーズで読みたいと思う推理小説
 だいたい、私はこういう流行には、少し乗り遅れる。