倒閣運動の背景

 菅直人は、小沢一郎と会談したいと言っている。
 わたくし思うに、会談するにせよ、しないにせよ、記者会見の場でいうべきことではないし、むしろ、会談そのものもすべきではないだろう。
 そういうアウトするに決まっている球まで追いかけるから、リーダーシップがないと言われる。
 自民党石破茂政調会長も、‘小沢一郎とは連携しない’と、早速くぎをさしている。
 今、小沢一郎菅直人に取って代わったとして、何ができるのか知らないが、もしできるのなら、倒閣しなくてもできそうなものだ。
 気になるのは、この倒閣運動の背後で、なにかうごめいてないかということの方だ。
 菅直人は、エネルギー政策の軸を、原発から自然エネルギーへと転換させようとしている。どこまで自覚的であるかはともかく、そのことは、これまで、エネルギーを支配し、その権益を囲い込んできた、官僚と企業の強固な構造にくさびを打ち込むことを意味している。郵政民営化の比ではない、大きな抵抗が働くと想定されなければならないだろう。
 とくに、米倉経団連会長の一連の発言は露骨にみえる。
 5月9日、浜岡原発停止要請について「唐突感が否めない」 と批判。
 5月23日、電力会社の発電と送電の分離論についても「(議論の)動機が不純」と批判。
 5月26日、自然エネルギーの比率を20%超に高める方針を示したことには「数字だけが独り歩きする政策づくりは危険だ」と批判した。
 それぞれ一応の理があるように見えるが、全体としてみると、脱原発政策にたいする抵抗、か、すくなくとも牽制としかとれない。
 また、5月23日には、関西経済連合会の会長に、関西電力の会長・森詳介が選任された。
 これに対して、楽天三木谷浩史が、経団連からの脱退を示唆する発言をしている。
 孫正義の東日本ソーラーベルト構想とともに、この動きにも注目していかなければならないと思っている。
 孫正義は、25日、神奈川県の黒岩知事など、14道県の知事と、自然エネルギー協議会を7月に設立すると発表した。
 また、藤沢市では、スマートタウン構想がスタートしている。

 参加企業はパナソニックのほかアクセンチュアオリックス、日本設計、住友信託銀行東京ガスパナホーム三井不動産三井物産。計画づくりから開発、環境配慮型の住宅ローン、カーシェアリングなど、街の運用やサービス面までそれぞれの企業が担う。

 構想は旧松下電器産業藤沢事業所の跡地(約19ヘクタール)に、環境技術を駆使した約1千戸の住宅や商業施設などを建設。全てに太陽光発電パネルと蓄電池を備える。電気自動車などに対応する充電設備やLED街路灯、見守りサービスも提供する。「街びらき」は2013年度の予定。

 パナソニックはかなり本気でソーラー発電の普及に取り組むつもりらしい。
 不安に思うのは、こうした原発権益vs.脱原発の企業の対立と、今度の小沢一郎の倒閣の動きが無関係かどうかという点である。
 というのも、小沢一郎はあいかわらずで、倒閣してどうするんだ?ということについて、何も見えないために、そういう裏読みもしておかざるえなくなるわけ。
 菅直人のリーダーシップの欠如には、たしかにいらいらさせられるが、しかし、今、政界全体を見回して、この人ならというような人物はみあたらない。
 菅直人が辞めたとたんに、浜岡原発が動き出し、東電や経産省の責任がうやむやにされ、自然エネルギー比率拡大が雲散霧消する、なんてことになったら目も当てられない。