東洋の白いやきもの と 仙がい

knockeye2012-08-04

 出光美術館で「東洋の白いやきもの」と「仙がい(‘涯’のさんずいのない字)」が併設展示されている。趣味のよいとりあわせ。
白磁、青白磁を中心に、朝鮮の熊川茶碗、日本の志野焼など、とにかく白いやきものだけで構成した展覧会。
 以前、「白磁ってのは、女の子のお尻なんだ」と言った人がいたけど、季節柄これみよがしの夏服で視界を横切る女の子たちのお尻を思い浮かべつつ、そんなものなのかなぁと思いもする。
 与謝蕪村の句に
ゆく春や重たき琵琶の抱きごころ
というのがあるけれど、あの琵琶の重たさも女の尻なのかなぁと感じることもある。春の終わりにとくに琵琶が重たくなければならない理由もなさそうだが、女の尻が重たく感じるのは、春が行ったあとかもしれないし。
 今回の展示のなかで、そんな‘抱きごころ’を思わせるのは、唐時代、けい(鳥居におおざと)窯で焼かれた壺。ゴージャスなボリュームで、シミも貫入のひとつもない純白の肌は謎めいている。
 本格的な白磁は、その唐時代のけい窯・定窯から始まった。白磁はもともと西からもたらされる、ガラスや銀の器への憧れからはじまったそうだ。そして確かにまったく同じ形のガラスの水指しや銀の杯が展示されていたが、ガラスの水差しは銀化している。銀の杯は灼けて黒い。磁器だけは若い女の子のお尻みたいに白い。
 宋の時代にはいると、白磁の中心は景徳鎮になる。そして、白を好んだモンゴル族元王朝では、それまでの青磁に代えて白磁が国家の祭器として扱われるようになる。
 明の時代に入ると、徳化窯でやかれた象牙色の白磁がヨーロッパに輸出され「ブラン・シーヌ」と呼ばれて尊ばれた。
 景徳鎮の白磁の中に、透明の釉薬にわずかに鉄分が残って、それが還元焼成される際に青く発色するものがある。青白磁といって、‘影青(いんちん)’といわれる、彫りの深い部分にうっすらと青い色がにじむ。これなんかは、見た感じ、ソーダ味のアイスクリーム。
 女の子の肌にアイスクリームなんだから、じつに夏向きの展示。青白磁刻花連池文枕なんてホントに涼しそう。
 併設の仙がい(涯のさんずいのない字)については、前にこのブログでうっかり書いたことでずっと気に掛かっている。まちがいはいっぱい書いていて、それは気にもならないんだけど、仙がいの絵について、「おおむね好きだけど、ときどき‘くさい’ことがある」みたいなことを書いてしまったのが、後で気がついたことがあって、気持ち悪くてしかたないので訂正したい。
 仙がいの絵に‘くさい’のはない。‘くさい’のは白隠だった。白隠は若い頃、鬱になって、その対処療法もかねて絵を始めたといういきさつがあり、そういう屈折がちょっと見える。
 仙がいにくさい絵はない。とりあえずこれだけ訂正したい。まさに「がい(涯のさんずいのない字)画無法」だった。