大仙がい展

knockeye2016-11-06

 出光美術館で「大仙がい展」がやっている。出光美術館はもともと仙がいのコレクションで知られているが、今回は、それに加えて、福岡美術館と九州大学文学部のコレクションを加えた展覧会。さらに、永青文庫でも「仙がいワールド」と題して、細川護立のコレクションを展示している。時ならぬ仙がい祭りとなっている。
 ピーター・F・ドラッカーは、日本の水墨画のコレクターとしても知られているが、禅画について根津美術館の公演で語った言葉が強く印象に残っている。

・・・禅画は江戸の反体制文化でした。ガイジンが日本の美術を鑑賞するとき、最も大切な事柄のひとつは、日本における禅画というものが20世紀ヨーロッパにおいて失敗した表現主義、それを成就したものとして見ることです。
(略)
ヨーロッパの20世紀表現主義の反体制文化、その耐え難い不安と苦悩は信仰の全くの欠如の、精神性の不在を示しています。しかしながら、禅画は絶望を超克する信仰の勝利でありました。

 禅画が反体制文化だという視点は、私たち日本人は却ってとりづらい視点だと思う。それは、明治以来の左右の奇妙なねじれのために、健全な意味での反体制がどんなものか、私たちには見づらくなっているのではないか。そう思う。
 「禅画は絶望を超克する信仰の勝利」だとする、その見方が、日本の正統的な美術史観から見てどうなのかはしらないけれど、ナチスの迫害を逃れたユダヤの知識人のその観賞は、いつまでも心に引っかかる。たぶん、私たちの多くはそういう見方をしないのではないかと思うと、そういう私たちは、実はひどく呑気なのではないかとも思う。

 永青文庫へ向かう胸突坂という坂道を歩いた。神戸は坂の多い街だと言われるが、あそこは海から山へと登ってゆくだけ。東京の坂は波打っているみたいだ。

 永青文庫から続く新江戸川公園に寄り道して帰った。カメラマンがいっぱいいて、何してんかなと不思議だったんだけど、カワセミを狙ってるんですと。早稲田大学で学園祭みたいのやってて臨時バスが出てた。