捕鯨をめぐる米中の綱引き

knockeye2013-03-01

 シー・シェパード捕鯨妨害が、国際法に禁止されている海賊行為にあたるという判決がアメリカの裁判所で。
 日本人にとってみれば、そんなこと今さらいわれるまでもないのだけれど、「ザ・コーヴ」とかなんとかいう映画が、アカデミー長編ドキュメンタリー賞をを取ったりしていたことを思えば、なんだか価値観が急転換したかの思いがある。
 ちなみにあのときのアカデミー作品賞が「ハート・ロッカー」で、わたしは、これは、わたしの記憶や意識の中でだけのことかも知れないとことわっておかなければならないが、「ザ・コーヴ」が受賞した時、キャスリン・ビグローの表情が一瞬曇ったのを見逃さなかったと思っている。
 話を戻す前にさらに脱線すると、読みかけて放り出している本のひとつに『密行 最後の伴天連シドッティ』というのがある。新井白石キリスト教に対してどのような態度をとったかに興味があって読み始めたのだが、最初のあたりを読んでいるうちに、このシドッティをはじめ、当時の宣教師たちの独善ぶりが鼻について、‘こいつら今でいうシー・シェパードだな’と思って読む気がしなくなった。
 自分たちがレイシストだと気が付かないレイシストはたちが悪い。「ザ・コーヴ」を観たお歳を召した白人女性が、クジラを殺すのは「ナチがユダヤ人を殺したのと同じだ」といっているのをテレビで観た。
 それはさておき、アメリカの裁判所がシー・シェパードを海賊と判断した背景には、中国が海洋権益を拡大しようとしていることに対する、アメリカの警戒心があるのではないかと、勘ぐっている。
 アメリカは中国の軍事力を日本列島のこちら側にまで進出させるつもりはさらさらないだろうから、その面での日本との同盟関係は重要になっていると思う。
 そういうときに、尖閣あたりで中国の漁船がやっているのとほとんど同じことを自国の変な連中がやっててくれては困るわけ。すくなくとも、それをアメリカが容認しているように見られると、尖閣南シナ海あたりの中国の動きに対して、なにか言おうとする時、整合性という点で発言力が弱まる。瑕瑾がないようにしておきたいのだとすれば今回のような判決になるだろう。裁判長は、シー・シェパード創設者のポール・ワトソンを‘変わり者’と呼んだそうだ。
 さらには、いわゆるシェール革命によって、アメリカは油を自給自足できるようになったという点が重要。つまり、これからは中東に軍事力を差し向けなくてもよくなる。このこともアメリカが軍事面で中国に対して心理的に優位に立てる一因ではないかと思う。
 おそらくこれから、米中の海洋権益をめぐる対立が激化するのかもしれない。
 ちなみに、新華社通信の論調だと、‘日本の調査捕鯨船団が南極に近いオーストラリアの領海で反捕鯨船に「衝突した野蛮な行為」はオーストラリアの国民と国際反捕鯨主義者の強い非難を浴びた。「この行為はここ3年来に環境保護主義者が受けた一番野蛮な行為だ」’となる。