イラン?、それとも中国?、トランプが叩くのは

 アグネス・ラムのグラビアが懐かしくて週刊大衆を買ったら、ほぼエロ雑誌であるにもかかわらず、こんなところにも佐藤優が何か書いていて驚いた。

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アグネス・ラム by 池谷朗


 いつ書いてるのかと思わせる猛烈な執筆量だが、ただ、さすがに週刊大衆となると、すこし、ネタが古い。
 トランプ政権が、イラン原油禁輸で適用除外を撤廃したという今月一日のニュース

www.nikkei.com

と、安倍首相が前提条件を付けずに日朝首脳会談の実現を目指す方向に転換したという5月6日のニュース

www.nikkei.com

の関係について書いている。

 トランプ政権はとにかく発足当初からイランを目の仇にしている感があるが、北朝鮮とはくっついたり離れたり。いかに、アメリカの軍事力が強大とはいえ、アジアと中東の二方面で戦争状態を保てないので、イランに対して、こんな高圧的な態度に出ている以上、北朝鮮に対しては融和的な態度をとらざるえない。したがって、安倍政権がこの機を狙って北朝鮮に接近するのは正しいカードだろうと書いている。

 トランプ政権のイランに対する制裁については、「目的が不明確」だと、池上彰週刊文春に書いていた。素人目には、目的が不明確というより、はっきりと戦争が目的だと見えてしまう。

www.newsweekjapan.jp

 このジョン・ボルトン国家安全保障担当補佐官に加えて、シャナハン国防長官代行が正式に国防長官に就任すると(トランプ大統領はそうすると発表している)軍事産業出身の人が国防長官にはつかないという、アメリカ政府の不文律が崩れることになると、池上彰は書いている。だとすれば、トランプ大統領は、この戦争がペイすると考えているのかもしれない。

 五月十二日にはホルムズ海峡を航行中のタンカーが何者かに攻撃を受けており、もはや、事実上、戦争の一歩手前まできている。

www.newsweekjapan.jp


 この時点までは、アメリカ、イラン、北朝鮮の緊張関係は、たしかに、佐藤優の分析通りだったと思うのだが、このあと、さらに華為の事実上の禁輸処置という事態が出来した。これが五月十五日。

www.itmedia.co.jp
jp.reuters.com
www.businessinsider.jp

 たしかに、華為は民間企業であって、中国政府を相手に事を構えたことにはならないのかもしれないが、

www.bloomberg.co.jp

中国企業アメリカではごみ箱すら買えないという発言がされるほど、米中関係の緊張は極度に高まっているといえるのではないか。

 だとしたら、トランプ政権下のアメリカは、中国とイランの二方面で、一触即発の事態にたちいたっていると見える。これは戦略的にばかげていると見える。

 中国と一触即発の緊張状態にありつつ、北朝鮮と宥和する、なんてことが可能だとは思えない。アメリカにほとんど同時に宣戦布告されたに近いイランと中国は、おそらく緊密に連絡を取ろうとするだろうし、北朝鮮はそのチャンネルとしてうってつけだろうと思える。

 したがって、月初とは状況が一変してしまい、日朝首脳会談にあまり意味がなくなってしまった。
 そこで、安倍首相は、6月なかばにイランを訪問する予定を立てたようだ。

www.nikkei.com


 トランプ政権のイランに対する態度はたしかに不可解である。とにかく「戦争が目的」と考えないとつじつまが合わないが、本気なのかどうか、それがペイするとトランプ大統領が考えているのかどうかが読みにくい。

 イランとキューバのふたつは、オバマ政権の数少ない実績なので、これはこのまま受け継いだ方がよいのではないかと思う。これが、オバマはイランの非核化に道筋をつけたのに、トランプはそれをぶち壊したとなれば、来年11月の大統領選挙に、むしろ悪影響が出ると思えるが、その辺の影響をトランプ大統領がどう考えているかが読みにくい。

 ただ、6月なかばの安倍首相のイラン訪問が実現するとなれば、それは、5月25日に来日するトランプ大統領も了承したということになるだろうから、だとすれば、アメリカは当面の敵を、イランではなく中国に絞ったと考えるべきなのかもしれない。
 池上彰のいうように、トランプ政権のイラン制裁は出口がみえない。とはいえ、一度振り上げたこぶしをむなしくおろすわけにもいかないのだろうから、出口でなくとも、逃げ場くらいは確保しなければならないはず。今の状況ではその逃げ場が中国になりかねず、中国とイランが組むのを避けたいのだとすれば、ましてや、イランと北朝鮮が核開発で共闘するのをさけたいとすれば、今度の6月の安倍首相のイラン訪問にその逃げ場が提示されるはずだと思う。
 もし、安倍首相のイラン訪問が実現すれば、それは、トランプ政権が中国を集中的にたたくと決めたということなのかもしれない。