もし、アメリカ人があのニワトリなら

 トランプ大統領が、戦死した兵士や傷病兵を「loser」で「sucker」だと発言したことがけっこうなニュースになっている。
 悪口のニュアンスが外国人にはわかりにくいんだけど、「負け犬」で「バカ」ってことなのかな。
 その詳細は、ネット上のどこにでも転がっているので参照してもらえばよい。トランプ大統領本人は否定しているそうだが、映像つきで残ってる。
 過去の発言だが、11月に大統領選をひかえているので、今これがニュースになるという判断だろう。もし、トランプ大統領を支えているのが保守層であるのならば、戦争の英雄を「負け犬」呼ばわりする発言は、致命的なはずなのである。
 日本にいると、「戦争で死んだ奴はバカな負け犬だ」という発言は、すんなり受け入れてくれる人もいると思うのだ。戦争の否定がわたしたちの国の国是だからだ。
 しかし、アメリカ人にとって、アメリカ人をアメリカという一つの国にまとめている共通認識、共同幻想と言ってもいい、そういう理念は、自由のために銃を持って戦うってことだったと思うのだ。
 もしそうなら、戦争の英雄をバカ呼ばわりするのは、アメリカそのものの否定になる。だから、このニュースは大スキャンダルになるはずだが、どうもそこまでの熱量が感じられない気がする。
 「アメリカ・ファースト」、「アメリカをふたたび偉大に」というトランプの主張は、とりようによってはアメリカの理念からはズレていないようにとれた。
 メキシコとの国境に壁を作るなんてことも、それにどれだけの効果があるのかはともかく、アメリカの理念に反していないというエクスキューズは可能に思えた。
 だが、戦争の英雄をバカ呼ばわりは、どう言い訳もできないと思う。そして、そういう発言が表沙汰になっても、トランプ大統領を支持する人たちの熱量が変わらないのなら、ふりかえってみて最初から、トランプの支持層は「アメリカの理念なんて知るかよ!ふざけんな!」と思ってたってことだと思う。
 昨日の「フード・インク」を観てから、あのデブに改良されたニワトリが頭から離れない。あのニワトリが選挙権を持ってたら、トランプを選びそうな気がする。「自由」「人権」「平等」そんな価値観にうんざりしている。
 トランプのように兵役逃れをして、戦争で死んだ奴をバカにしたい、結局、それが本音で、そういう人が実はアメリカの多数派なのかどうか。そうだとしても別に驚かないが、そうなのかどうか、大統領選の結果を待ちたいと思う。
 民主党バーニー・サンダースが失速したのは残念だった。アメリカの理念と本音を止揚できる唯一の存在のように見えていたのだが、ジョー・バイデンがトランプよりマシだというなら、ヒラリー・クリントンだって、もっとマシだったはずなのである。
 トランプが勝つかもしれない。アメリカ国民の大多数があのニワトリなら、ジョー・バイデンなんか支持するわけがない。

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