中韓蜜月

knockeye2013-06-30

 中韓首脳会談で、韓国の朴槿恵大統領が、1909年に安重根伊藤博文を暗殺したハルビン駅に石碑を建てる提案をした。これを橋下徹の「慰安婦発言」と比較してみれば、日本の政治家がいかに低レベルかが分かる。中韓歴史認識を共有するアピールとなり、日本の右傾化に対する批判になる。もちろん、他国の総理大臣を暗殺した人物を表彰することについて、国際的な論調が批判的でありうる危険性はあるが、「慰安婦容認」よりはましになることは間違いないだろう。つまり、‘力学’の問題として、安倍首相の「侵略否定」の発言や、橋下徹の「慰安婦容認」の発言が、この朴槿恵大統領の一手を可能にしたということを銘記すべきだろう。
 歴史的経緯と経済状況を考えれば、中国と韓国が接近するのはむしろ当然で、それについて日本の政治家や官僚が驚いているとしたら、わたしはむしろその方にがっかりする。
 また、 英国・北アイルランドで開かれていたG8で予定されていた日米首脳会談が、オバマ大統領からキャンセルされた。
 先の米中会談が一定の成果を上げたので、米中韓の関係が親密に保たれれば、日本は中韓に対するアメリカの出張所程度の存在でしかなくなるだろう。
 これは、だから、前々から言っていると思うけれど、日本はロシアとの国交を早く回復すべきだ。ソビエト連邦大日本帝国も、ともに消滅した現在にあっても、いまだにその戦争の後始末ができないとは、政官ともに無能と言うしかない。
 何度も言うけど、ロシアと日本の国交が回復すれば、EUと日本が陸路でつながる。ヴァニノ〜サンクトペテルブルグ間の鉄道事業を日本で押さえるべきだ。それと引き替えなら北方領土なんて要らない。
 こういうことをいうと国家主義者がまた騒ぎ立てるけれど、現に70年間なしでやってきて、一時は、世界第二の経済大国にまでのぼりつめたんだろう?じゃあ、いらないじゃん。
 北方領土問題といっているけれど、実際には、1、戦争責任の問題、2、国境の線引き、3、旧島民の補償の三つの問題をいっしょくたにしている。1と3を丁寧に手当てすれば、2の部分、つまり、領土の問題はさほど大きくない。
 北方四島を放棄するメリットもあって、それは、実効支配主義で日ロ間の領土問題を解決した実績が、尖閣諸島について、中国への牽制になる。
 竹島については逆効果になるが、あれは今後も国際裁判で争う態度を維持し続ければ、今まで通りペンディングにできる。というのは、竹島についての韓国の論理はむちゃくちゃだから。
 朝鮮半島に関しては、竹島よりも北朝鮮との関係改善の方が重要だろう。つまり、6ヶ国協議で米韓中が親密になっている状況で事態が進展すれば、拉致問題はスルーされる危険性がある。したがって、ここでもロシアと連携することが必要で、核問題だけでなく、拉致問題(それは人権問題なわけだから)も同レベルに重要なんだという主張で日本一国が孤立しないために、ロシアも巻き込んでいかなければならない。なぜロシアなのかといえば、ロシアは核問題でアメリカに主導権を握られたくないはずだから。
 こうして、6ヶ国協議はいつまでも踊らせておけばよくて、日本は北朝鮮と別個に拉致問題の解決に向けた2国間協議を進めるべきだ。その意味では、この間の飯島勲北朝鮮訪問はよい手だったと思う。中韓が接近するということは、一方で、北朝鮮と中国の関係が不安定になることだから、日本は北朝鮮との関係を改善していけばよい。拉致問題さえ解決すれば、日本はさらに積極的に北朝鮮に投資すべきである。北朝鮮の経済成長を、労働力としても市場としても日本が独占できる可能性がある。
 それに、そうした大きな経済援助によって、北朝鮮の口から「竹島は日本の領土」という発言を引き出せる可能性もある。
 さらに、もうひとつ、ロシアとの国交回復が意味するのは、日米安保解消というカードを日本が握れることだ。もちろん、解消のそぶりさえ見せる必要はないが、日ロの国交正常化がそのカードを日本の手中に忍び込ませるのはたしかだろう。
 上のように考えてくれば、中国、韓国、アメリカ、北朝鮮、のすべての外交について、ロシアとの国交正常化が重要になってくる。
 そして何より、このところの政治の流れを観ていてつくづく思うのは、やはり、わたしたちの国は、中国、韓国、アメリカよりも、ヨーロッパの国々と文化的な親和性が高い。とくに、慰安婦の問題でアメリカが日本を非難したのには驚かされた。アメリカって言う国は、日本に原爆を落とし、ベトナムに枯れ葉剤をまき、ありもしない核兵器を口実にイラクに侵攻し、法的な根拠もなくイスラム教徒を収容所に押し込めていながら、慰安婦問題で日本を非難って、ちょっと日本人の感覚では理解できない。
 それは、今も今、チベットを蹂躙している中国が、第二次大戦中の日本の侵略を声高に言い立てる精神風土に似ている。韓国も、拷問で非難されなければならないのは、今の大統領のお父さんの方だろう。
 結局、明治維新以降、わたしたちはヨーロッパと歴史を共有してきた。今さら、国家主義が台頭してきている中国や韓国とは(まあ日本でもいまだにそのレベルの愛国者がいるけれど)、話が噛み合わない。
 日本国憲法日米安保は同時に成立している双子みたいなもの、というか、アメリカの意識としては、日本国憲法日米安保の一部なのかもしれない。安倍首相にしても、橋下徹にしても、日本国憲法を改変するというなら、日米安保に手をつけないわけにはいかないということまで覚悟しなければならない。当然だろう。その意味でも、もし、憲法改訂に本気なら、ロシアとの戦後処理ぬきにそれをすすめることはできない。
 安倍首相は国会閉会時の記者会見で「デフレからの脱却は歴史的な大事業だ。3年間はそこに集中していく」と表明したそうだ。憲法、侵略、歴史、は後回しということだろう。それが正しいと思う。中韓が蜜月といっても、20年前なら、あるいは10年前ですら、それがどうした?ということだったと思う。かの二国が経済的に発展したからこそ、それがニュースになる。
 日銀のインフレ政策をムダにしないためにも、財政出動を細らせることなく、しかも、それが必要な分野に行き渡るようにしなければならない。また、その一方で財政を健全化のためには、不透明で非効率な部分にはカネが回らないようにしなければならない。そのためには、自由で公正な競争環境を整えるしかない。
 世界初の水素発電所の成功など、成長の芽はいくらでもあると思う。官僚や族議員などの既得権益が、自らの利権を守るためにこれらの芽をつまないようにしなければならないのだが、原発に対する態度などを見ていると、そういう大胆なシフトチェンジが安倍首相にはできないのではないかと不安に思っている。