ひぐらし

knockeye2013-08-01



 伊東静雄詩集『夏花』より


いかなれば




いかなればことしの盛夏のかがやきのうちにありて、
なほきみが魂にこぞの夏の日のひかりのみあざやかなる。


夏をうたはんとてはことさらに晩夏の朝かげとゆふべのこぬれをえらぶかの蜩の哀音を、
いかなればかくもきみが歌はひびかする。


いかなれば葉広き夏のつる草の花を愛してかつてそをきみの蒔かざる。
かつて飾らざる水中花とやしなはざる金魚をきみの愛するはいかに。