韓国大統領選の不正をめぐるデモ

knockeye2013-08-28

 日付を見るかぎり。もはや速報とはいえないわけだけれど、すくなくともわたしは今週のニューズウィークの紙面で初めて知った。韓国のNIS(国家情報院)が、先の大統領選で、現大統領にとっては対立候補だった文在演候補を、ネットで非難中傷する書き込みを,組織ぐるみで行ったことが明らかになり、キャンドルを手にした韓国市民のデモに取り囲まれている。
 NISとは、元のKCIAで、1973年の金大中事件の首謀者である。そのときの大統領は、今の朴槿恵のお父上、朴正煕であった。
 選挙戦当時、現職の大統領、つまり、現に権力を行使できる立場にいる候補が、情報機関を使って、対立候補に対して選挙妨害するというなら、わかりやすいが、今回の場合はそうではない。今回の事件の深刻な点は、元軍事独裁者の娘、あるいは、その周辺に,政権につく前から、国家の情報機関を動かす権力があったと、さらけ出したことだ。韓国の民主主義は危機に直面していると考えなければならない。
 これに関する懸念については、先月10日に書いておいたが、どう考えても、李明博元大統領のお兄さん逮捕からの流れは、なにかしら疑わしいのだ。
 時を同じくして、わたしたちの国では、A級戦犯の孫、隣の韓国では、軍事独裁者の娘が,政権を担って、国民感情から遠く離れた泥仕合をやり始めているのだとしたら、どうにも悲惨な話。
 それに、こういうことに冷静でいられない幼稚な国民も多くて、嫌韓デモとか、反日デモとかにのぼせあがったりしているのも困った話だ。
 黒川創の『日高六郎 95歳のポルトレ』という本を読んだ。本自体は、正直言って、ぼやっとした読後感なんだけれど、そのなかで印象的だったのは、日高六郎が,そのころ、自宅軟禁状態だった金大中を訪ねようとして韓国に行ったとき、タクシーの運転手も、途中のガソリンスタンドのおじさんも、日本から金大中に会いに来たと知ると、応援してくれたそうだ。
 すくなくとも、わたしたちの国と違って、韓国民は、自分たちの手で民主化を獲得してきた。それが、金大中の死後、またおかしくなりつつあるように私には見えている。
 こういうときにあらためてありありとわかるのだが、在韓日本大使館前に慰安婦像などを設置する韓国人と、新大久保あたりでヘイトスピーチなどをやっている日本人は、ある精神を共有している。ほとんど、国境を越えた兄弟愛さえ感じるくらい。
 しかし、個人的な意見としては、今、NISの不正に抗議の声を上げている人たちが代表している精神を、わたしたちは応援していかなければならないし、わたしたちも、わたしたちの国の民主主義をホンモノにしていく努力を続けなければならないと思う。為政者のプロパガンダに乗せられて、嫌韓だ、反日だ、と気勢を上げている人たち。バカだと思う。

日高六郎・95歳のポルトレ―対話をとおして

日高六郎・95歳のポルトレ―対話をとおして