「アメリカン・ハッスル」

knockeye2014-02-01

 遠近両用めがねってのがなんか性に合わないので、ふつうのめがねにもどした。それで、こないだ、それを受け取りにいったついでに駅前のサイゼリアによったら、平日なのに満席で、少し待ったのだけれど、後に入ってきたおにいさんたちが、「ジャッジ!やばかった」という話をしていた。
 つまりこれは、「どちらさんかしらないけれど、おたくもご覧になったら?」という意味だと受け取って、観にいった。広告業界のひとが広告業界を舞台にした映画を撮るとか、そういうの、おもしろい可能性あるなとは思ってたし。
 それでまあ面白かった。豊川悦司リリー・フランキーがおいしい役を楽しんでるし、よくできた話だし。
 でも、何が不満かというと、主人公が「いい人」で、「ドジだけど夢のあるまっすぐな若者にうたれたおとなたちが、彼を助けてくれました」みたいな話なんですよ、要するに。
 今って、有吉弘行がトップ獲る時代なんですよ。そういう時代にああいう「いい人」を主人公にする、作り手のずれ方がビミョーにやだった。
 で、こないだのサイゼリアの若者たちにお返しでおすすめしたいのは、「アメリカン・ハッスル」。笑いにはこの「にが味」がなくては。
 ジェニファー・ローレンスエイミー・アダムス共演というだけで、ちょっと、「お」でしょ。監督は「世界にひとつのプレイブック」のデヴィッド・O・ラッセル。「ハンガー・ゲーム」で有名になったジェニファー・ローレンスだけど、いいのは「世界にひとつのプレイブック」と「ウインターズ・ボーン」だって、小林信彦が言ってました。
 そして、特筆すべきは、主役のクリスチャン・ベイル。実は、さっきのさっきまであれが「ダークナイト」のクリスチャン・ベイルだと気がついてなかった。ある意味、バットマン以上の過酷な肉体改造。映画の中の主人公は心臓の薬を手放せないのだけれど、実際のコレステロール値も心配になってしまう。
 FBIの捜査官に「ハングオーバー!」のブラッドリー・クーパー。市長役に「ハート・ロッカー」のジェレミー・レナー。後半、どうなっちゃうんだろうというくらい話がでかくなったあたりでロパート・デ・ニーロも登場する。
 コン・ゲームがピタッと決まったときにもドヤ顔しない演出はさすがだと思った。話全体からそこだけ浮き上がらないようにしている。しかも、昔気質の推理小説ファンからも、文句が出ないだろうフェアな描き方をしている。
 しかし、なんといっても圧巻なのは、ハゲデブのアービン(クリスチャン・ベイル)をめぐって繰り広げられる、愛人シドニーエイミー・アダムス)と妻ロザリン(ジェニファー・ローレンス)の女の戦い。このふたりのコメディエンヌ対決は見逃せない。
 アカデミー賞10部門にノミネートされているのもうなずける。
 それから言い忘れてたけど、これはアブスキャム事件という実話に基づいている。で、思ったのは、東日本大震災のころの、小沢一郎菅直人細野豪志鳩山由紀夫夫妻、安倍晋三東京電力会長の勝俣恒久とか、いっぱいいた御用学者連中、役人連中、福島第一原発の吉田課長とか、そういうキャラクターを登場人物にして、この監督に映画を作って欲しいなと思った。小沢一郎なんか、東京の自宅に潜んで、ミネラルウォーターで洗濯しろって奥さんに指示してた。パンツとミネラルウォーターを手にしてる小沢一郎の姿って笑えるでしょ。