「ヴィンセントが教えてくれたこと」

knockeye2015-09-18

 「ヴィンセントが教えてくれたこと」てふ、ビル・マーレー主演の映画を観た。
 原題が、“st. Vincent”って、まあ、「ヴィンセント聖人」といったところで、この原題がちょっとシャレてるなと思って観に行ったのだったが、やっぱ、カトリックがからんでて、主人公のヴィンセントはアイリッシュで、もうひとりの主人公、隣に引っ越してきた母子家庭の少年が、新しく通い始めるエレメンタリースクールがカトリック系。少年自身は「たぶんユダヤ教じゃないかと思います・・・」みたいな自己紹介をするのだけれど。
 映画自体は、BABY、BEAST、BEAUTY、と、よく言われる3Bもの。BEASTは、ヴィンセントが飼ってる猫、BEAUTYは、ナオミ・ワッツが、「愛する人」に続いてまた、妊婦姿で演じる、ロシア系のストリッパー。素人が聞いても、ナオミ・ワッツのこの映画の英語は、何だろう、この発音って、思ってたのだけれど、ダカっていう苗字からしても、ロシア人だったんだ。
 ロシア女性が綺麗だってのは、けっこう音に聞こえているらしく、「クレージー・ホース・パリ」のオーディションシーンでも、「何人ロシア人なの?」みたいな台詞があって、「ハハハ」とか思ったものだったが、ナオミ・ワッツが演じたこのストリッパーは、ロシア女性のサバサバした感じも良く出てて魅力的だった。いつ産まれても不思議じゃないくらいのお腹で、ポールダンスしてる自体が、すでに豪快なんだけど。
 で、st. Vincentことなんだけど、小学校の行事で、あなたの身近にいる「聖人」を発表しましょう、みたいなのがあるんですな、知らないけど、あるんでしょう。そういう小さなコミュニティーの行事が、プロットのポイントになってるのが好もしい。 
 プロットは、センチメンタルと言っていいと思うけど、ただ、そのセンチメンタルを承知で受け入れているヴィンセントの感じが、この映画の味わいでしょうな。ヴィンセントはベトナム帰還兵で、この映画は、ベトナム戦争をテーマにした最終世代に当たるのかもと、最後のボブ・ディランを聴きながら思った。
 センチメンタルだけど、メロドラマじゃないのは、戦争の帰還兵の老後が、ともかくも地域のコミュニティーに、溶け込んでいく、ある意味では、まあまあ幸福な結末と言えるこのエンディングが、なんとなく含んでいる苦みだろう。映画で繰り返される、「it is what it is」っていう、そのリアリティーは、時代の感じかもしれない。