箱根 彫刻の森美術館 横尾忠則「迷画感応術」

knockeye2016-04-16

 熊本と言えば、気になるのは吉村さん。ネットが今みたいに悪意に汚染される前、バイクツーリストは一緒にキャンプしたり、写真を見せっこしたりしてつるんでいた。ゆるいつながりだし、いつの間にか解消したし、それでいいと思っているのだが、ただ、残念なのは、私個人が、なんとなく、バイクから遠ざかってしまったことだ。
 今みたいに、週末ごとに、映画だ、美術館だと訪ねまわっていたら、そんな暇がなくなる、というのは、実は二次的なことで、いちばん大きいのは、なんといっても仕事に追われている。絵や映画を観るのと、キャンプツーリングではかかる手間が違う。
 言い換えれば、私は遊びが下手。もっときちんと遊んでいれば、今でも年に一回くらいは、キャンプツーリングをしているはずだし、そしたら、たぶん、吉村さんとも連絡をとりあっていたはずだ。人は絶対、遊ばなきゃいけない。
 吉村さんは、賀曽利隆が九州に来た時、バイクで案内した。その時「君はホンモノだね」と(正確な言葉は忘れたけど、私の記憶の中ではそうなっている)言われた、遊びの達人だった。
 一心行の桜が折れた台風の時も、「大丈夫ですか?」と訊くと、「屋根が飛んだけど慣れてるから大丈夫」と返事が来た。いつも、こっちの上をいく人だった。無事を願いたい。
 土曜日は、思いつきで、箱根彫刻の森美術館に出かけた。今、横尾忠則の「迷画感応術」という展覧会がやっている。彫刻の森美術館はいつもそうだが、この展覧会も会期が長い。8月28日まで。なのでまだまだ見逃がすおそれはないものの、今日だなと思ったのは、桜が盛りなはず。この読みはドンピシャだった。

ブールデル《力》

ブールデル《雄弁》

舟越保武《道東の春》

イサム・ノグチ《雨の山》
 と、こんな風に、彫刻と桜のコラボ。しかも、桜の多くはヤマザクラ。接ぎ木や挿し木で育つソメイヨシノと違い、なんとなくのびやかな大木が多い。花と一緒に赤い葉が出るのも美しいです。

写真をクリックして、「オリジナルサイズを表示」で見ていただくと、もう少し解像度は良い。オリンパスSH−2の感じを確かめたい人もどうぞ。
 ほかにも、ニキ・ド・サンファールや、めずらしいところでは、田窪恭治がフランスで古い礼拝堂をアレンジした林檎の礼拝堂の箱根ヴァージョンとかがありました。箱根では雨ざらしなので、コルテン鋼がいい味を出してます。


 そして、横尾忠則ですが、神戸や西脇の個人美術館を含め、かなり展覧会を見てきたつもりにもかかわらず、この人は、無尽蔵というのか、いつも新しい。今回もこの展覧会のための描きおろしがありました。

 野外の展示をひとめぐりした後に、この絵を見ると思わず笑ってしまう。まんなかでぺチャーッとしてる人いるじゃないですか、あれ、アントニー・ゴームリーの《密着》という彫刻なんです。ニキ・ド・サンファールの足元にあるんですけど、歩いている人の反応を見ると、ウケてるみたい。で、そういうの必ず入れてくるっていうかね。ピカソ館もあるし、フェルナン・レジェの《歩く花》も歩いてるしね。
 彫刻の森美術館ということでか、立体作品の比率も高く、《GEOCHEMISTRY》てふ1986年の作品がかっこよかった。30年前の作品だけど今でも全然かっこいい。
 特に、原寸大写真で展示されていた《交叉の泉》は、トレヴィの泉と同寸の東京版という依頼で制作した10分の1スケールの模型。学芸員さんに聞くと、ほんとは現物を持ってきたかったそうなんだけど、2002年に作られて、なんといっても模型なので、運搬困難で諦めたそうだった。
 東日本大震災のはるか前なんだけど、「事前に地震を発生させ、東京直下型地震を封印する」というコンセプトで作られた。ほんとは六本木ヒルズのあたりに設置されるはずだったらしい。今からでも、作ってほしいなあ。
 ちなみに箱根のロープウェイは、この23日から大涌谷までの区間が1年ぶりに再開されるそうです。もう忘れてたけど、火山活動が活発化して休止してたんでした。
 結局、私たちは火山活動でできた島の上に住んでるってことを覚悟して暮らしていくしかないみたいです。世界標準ではなく、ローカルなスタンダードで、建築やインフラにかかわることは厳しく規制していかなくては、ここでは生きていけない。
 1995年に阪神淡路大震災があったときは、こんなことはあと100年は起きないんだろうって思いませんでした?。ところが、それから15年後に東日本大震災があり、その5年後に熊本の地震があり、こういう国なんだし、そのおかげで自然が豊かなんだし、経済優先なんて絵空事で、助け合って生きていくしかないんだなと思います。
 それからおみやげに、箱根ねこカップってのがあって、これちょっとウケると思います。