『白い犬』

knockeye2017-02-07

白い犬

白い犬

 梅佳代の「白い犬」って写真集が出てたので買った。
 梅佳代の写真展で見たあの犬だと思う。あの写真をどうしてももう一回見たかったのだけど、わたしが見たいと思ってた写真はなかった。あのときの図録も買ったんだけど、そこにも載ってなくて。
 梅佳代って人はじつは孤高の芸術家で、波長の合う同業者がいないんじゃないかという気がしている。
 週刊文春阿川佐和子のインタビュイーで出てた。なんか婚活してたらしい。でも、破局したんで、また写真集を出したらしい。
 「最近写真がへたになった」とか言ってる。スナップ写真ってのが撮りにくい時代であるらしい。木村伊兵衛なんかはいつもカメラを携えていて、いつ撮ったかわからない早業でサッと撮ってたらしい。
 今でもスナップ写真の撮り方として、それが理想だと思うのだけれど、今それをやろうとすると、コンプライアンスだとか肖像権とか、そういうことをどうしても考えてしまうそうで、そうなってくるとスナップ写真って分野は絶滅するしかない。
 たとえば、アルフレッド・アイゼンシュタットの「勝利のキス」

なんて歴史的な写真も、ロベール・ドアノーの「パリ市庁舎前のキス」

も、現代では「おまえなんで人のキスしてるとこ撮ってんだよ」って、田代まさし的な騒ぎになっちゃう。
 たぶん、みんなカメラ持ってるからだろうな。しかも、フィルムカメラと違って、写真一枚当たりのコストはゼロに近い。しかも、加工も自由自在となると、確かにどこか暴力めいてくる。
 こういう時代に、梅佳代みたいな天性のスナップ写真家は、ストレスを抱えるだろうな。誰も梅佳代のようには撮れませんけどね。ちなみに梅佳代はいまだにフィルムで撮っているそうです。
 わたくし思うに、デジタル二眼レフってあったらいいなと。二眼レフの機構自体はどうでもいいんだけど、二眼レフは胸元で抱えて、ファインダーは上からのぞき込むでしょう。

 一眼レフでも、コンデジでも、スマホでも、カメラマンと被写体の関係がダイレクトじゃないですか。スマホなんか、何なら、被写体に向けて拳を突き出してる。
 二眼レフは胸元で両手で抱えて、被写体の像を上からのぞき込むっていうワンクッションがいいんじゃないかなと思う。被写体とカメラマンの関係が和らぐんですよ。
 首からぶら下げて、液晶をパカッと開くようにすればいいだけなんで、すぐにできるはず。今のカメラはファインダーよりたいがい液晶なんだから、二眼レフスタイルの方が使い勝手がいいとおもうんだけど、どこも作りませんね。