「ユリゴコロ」

knockeye2017-10-12

 「ユリゴコロ」の原作者、沼田まほかるは「イヤミス(読んだ後イヤーな気分になるミステリーの略だそうです)」の女王と言われるベストセラー作家なのだそうだ。もうすぐ公開される蒼井優阿部サダヲの「彼女がその名を知らない鳥たち」も彼女が原作者だそうである。
 主演の吉高由里子もそうだけど、佐津川愛美の狂気が作品に命を吹き込んだと思う。吉高由里子佐津川愛美の共演シーンで描かれる美沙子(吉高由里子)の内側が観客の脳裏に刻印されて離れない。そのあとの展開に吉高由里子の端正な顔立ちが逆に生きてくる。
 佐津川愛美は「ヒメアノール」もよかったし「だれかの木琴」もだし、なかなか目が離せない女優さんになりつつあるようだ。
 ストーリー展開は、いま小説はこうなんだろうと思う、そういう展開。ジョン・アーヴィングが「19世紀的な物語の復権」というようなことを言われていたのももうずいぶん昔の話になったが、19世紀的でなくても、物語を紡ぎ出すこういう人が生まれてくる。ジョン・アーヴィングみたいに登場人物のほとんどが本を書いたりはしないが、この作品にも一冊のノートがキーアイテムになっている。
 人の不倫を見つけてつつきまくる、みたいなことしかできないテレビの世界ではたぶんこれをどう宣伝したらよいか、映画業界の人たちはアイデアが出てこなかったんだろうと思う。でも、たぶん、映画好きの人なら見逃さない方がいいと言うかも。