わたくしこないだ『家族を想うとき』について書いた時に、すっとぼけたことを書いた。ケン・ローチ監督は、2006年の『麦の穂をゆらす風』だけでなく、2017年の『わたしは、ダニエル・ブレイク』でもパルムドールを獲得していた。
ちなみにこの年のカンヌのラインナップはすごいな。アスガー・ファルハディの『セールスマン』、ポール・バーホーベンの『ELLE』、ジム・ジャームッシュの『パターソン』などなどを抑えてパルムドールを獲得したんだ。
この『わたしは、ダニエル・ブレイク』は、公開当時も気になりながら見逃していたのを、『家族を想うとき』が素晴らしかったので、観なくてはという気になった。
社会問題がテーマの、わりと地味な映画に違いないが、ケン・ローチ監督の作品の中で、イギリスではもっともヒットしたそうだ。
イギリスでは、DVDのパッケージもこうなっている。
「I,Daniel Blake」というタイトルは、このシーンからとられている。
ので、キービジュアルとしては、イギリス版の方がまっとうな気がする。日本版のは、なんか保険会社のCMみたい。
ちなみに、ロシア版だと
こうなる。
だからどうしたってことはないが、なんか面白い。
映画のストーリーにまったくふれてなかったが、一言で言うと、「弱者切り捨てがひどすぎるだろっ!、“レ・ミゼラブル”みたいなことになってっぞ!」ってことで、メッセージがストレートなプロテストソングみたいな映画だ。
こういう泥くさい感じの映画が、『セールスマン』、『ELLE』、『パターソン』といった、傑作の匂いのする映画を抑えてパルムドールという欧州の雰囲気には、何か考えさせられる。賞だけならまだしも、現にヒットしているわけだから。
いよいよイギリスがEUから脱退することが決まった。2016年の選挙の結果は、何かの間違いなんじゃないかと思ったが、結局、本気だった。選挙で政治が動く、本気の民主主義の国。
日本では、郵政民営化も骨抜きになったし、沖縄の基地移転は、総理大臣がにげてしまった。民主主義が根付いていないことに呆然とする。
この主人公のように、権利を主張する行動が、日本人には受けないのかもしれない。で、日本版のポスターは、あんな保険会社のCMみたいになるのかもしれない。