『モンタナの目撃者』『レミニセンス』『クーリエ』

 もし『MINAMATA』をまだ観てないなら『MINAMATA』をオススメする。
 それ以外で最近見た映画でオススメできるものというと、まず、『モンタナの目撃者』。
 アンジェリーナ・ジョリー?。って一瞬思うじゃないですか?。スターで客引きしようとしてるのかなと。『SALT』とか、もういいから。
 でも、宇多丸さんのレビューを聞いてたら、経緯はそうじゃないそうで、監督が降板して宙に浮いてた企画を、『ウインド・リバー』のテイラー・シェリダンに監督にオファーしたら「アンジェリーナ・ジョリーが出るなら」とふっかけられたらしい。
 というわけで、アンジェリーナ・ジョリーも『ボーダーライン』のエミリー・ブラントみたくハードボイルドで骨太な仕上がりになっている。
 しかも、いちばんアクション・ヒーロー的な活躍をするのが、アンジェリーナ・ジョリーではなく、メディーナ・センゴアっていう、失礼ながら、あんまり聞いたことない黒人女性なのがカッコいい。
 山火事を扱った映画では『やすらぎの森』、『ワイルドライフ』もよかった。アメリカでの山火事はけっこう日常的になってるのかも。ドキュメンタリーの『ビッグ・リトル・ファーム』でも、サイドストーリーとまで言えない重要さで山火事が入り込んできていた。

 『レミニセンス』は、ヒュー・ジャックマン主演の近未来SF。つうことになると、ウルヴァリンみたいな活劇が頭に浮かぶじゃないですか?。でも、これもいい意味で期待を裏切ってくれる。
 温暖化の海面上昇で水没しつつあるL.A.が舞台で、その水面が、フィルム・ノアールの濡れたアスファルトを思い起こさせる。
 ヒュー・ジャックマンの役どころも退役軍人で、戦争中に開発された、捕虜の記憶に潜入する装置を、今は、顧客に過去の思い出を追体験できるサービスに使って生計を立てている。
 フィルム・ノアールでは、追想シーンとして描かれていたものが、この映画では、この装置で映し出されるホログラムに代わるだけかと思いきや、この仕掛けならではの心にくい演出が謎解きに使われるのは、さすがだなと思った。
 この映画でも、いちばん強いのはタンディー・ニュートン演じる相棒の方で、ヒュー・ジャックマンは、けっこう情けなくファムファタルに翻弄されていく。

 『クーリエ』の表題“courier”はどうも「運び屋」という意味らしい。 
 キューバ危機の時代、東西のスパイ戦に巻き込まれた実在のイギリス人男性を、ベネディクト・カンバーバッチが演じている。
 スパイ映画ってやっぱり東西冷戦時代を舞台にしないとしまらない。
 というのは、今はネットで何でもできるんじゃないの?っていう思い込みがあるし、それと、東西の両方に、冷戦がホットな戦争になったら世界が破滅だという意識があった。冷戦だからこそスパイに存在感があった。CIAもイランコントラ事件以来むしろ滑稽なイメージ。『バリー・シール』とか。
 キューバ危機というだけで背景の説明は要らない。実話を基にしている重みがある。


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