『君たちはどう生きるか』

 金曜日のレイトショーが満席だったので、土曜日の朝になった。
 宮崎駿の新作を見逃す映画ファンも少なかろう。
 テーマ、モチーフ、キャスト、キーヴィジュアルに至るまで、事前にアナウンスしない戦略の意味はよくわかった。
 つまり、これは宮崎駿の新作なのである。フツーは、これが最終作、集大成、フィナーレだと思ううでしょ?。というか、もし、宣伝するとすれば、意図するしないにかかわらず、そんなニュアンスがつきまとうことになっただろう。
 しかし、それは、ちょっと宮崎駿を舐めてた。宮崎駿は、観客が考えてるよりはるかに天才だと、結局、忘れてるのだ。よくも悪くも業が深い。いくらこれが最後、これで引退と、本人が言い、またそう本気で考えていたとしても、結局、また作っちゃうのだ。
 集大成でも、最後のメッセージでも何でもない。新作を作っちゃうのだ。まるで40代くらいの脂の乗った映画監督のように。
 こないだ『怪物』のインタビューで、坂元裕二が、この歳まで脚本家を続けていると、何かが降りてくるなんてことはない、PCを前に呻吟して搾り出してくるのだ、と語っていたのに感動したが、その言が本当なのかどうかはともかく、もう辞める、ハイ、辞めたを繰り返しながら、結局、作らずにいられない宮崎駿の精力に驚かざるえない。