私はホックニーのフォトコラージュを見るまで、ピカソのキュビズムを理解できなかった。ホックニーのフォトコラージュを見て始めてキュビズムが理解できた。
1枚の絵に多数の視点を持ち込むと言葉で分かっていても、それが写真で実現されているのを見るのは衝撃だった。
というか、ピカソが、頭の中でこの複雑な作業をして、その結果を正確に絵に写していたと思い知らされたことが衝撃だった。
感覚的に捉えてわかったつもりになっていたものが、実は極めて理論的に構築されていたっていう発見。ピカソの絵が実は写実的であるという発見。
ホックニーほどピカソを理解していた画家がどれほどいるのかちょっとあやしいとは思っている。
このCeliaのコラージュはなかったけど、
は来ていた。
これは西洋絵画の伝統的な遠近法に対する挑戦というか否定で、ホックニーは、この後、何度もこれを絵にも描いている。ピカソのこの椅子の発見(発明?)は、絵画史上のエポックだと思う。
その意味では、今回の展覧会の『Blue guitar』の一連の版画に知的な刺激を受けた。ピカソの版画を刷っていた職人さんと出会って実現した版画集だそうだ。ネットで検索すれば出てくる。
この展覧会は不思議で、
だそうなので、1Fだけだけど。
ホックニーをスウィンギング・ロンドンの1人と考えていいかどうか迷うけれど、ビートルズとほぼ同世代なのは確かで、彼らとほぼ同時期にデビューし、するや否や世界を魅了したってイメージはある。
というわけで、インバウンドと関係なく外国人の鑑賞が多かった。
ちなみに、常設展の方にもホックニーのミニコーナーが設られていて、なぜか、ホックニーと横尾忠則の作品は撮影不可になっていた。
また、地階の図書コーナー
にも、ホックニーの図書が置かれていて、有名な
も閲覧できる。
アングルやカラヴァッジョ、フェルメールなどが、おそらく、カメラ・ルシーダやカメラ・オブ・スキュラを用いただろうという研究。
カラヴァッジョが絶対にモデルを使った、また、必ずトップライトの明るい部屋で作品を作ったというのはよく知られていると思う。
それに加えて、カラヴァッジョの素描がほぼ残っていないということもホックニーは根拠にあげている。
ちなみに、渡辺崋山も肖像を描くにあたって、鏡を2枚用いたと言われていて、具体的にどういうことなんだろうと思っていたけど、案外、渡辺崋山もカメラ・ルシーダを使ったのかもしれない。
2023年11月5日まで。7/21、28、8/4、11、18、25は10:00-21:00まで開館延長される。