『浮雲』『伊東静雄詩がたみ』

川崎大師の風鈴市の今日が最終日。出かける腹づもりにしていたが、この寒々した空模様、風鈴の音なんて聞いた日には、泣きそうになってしまう。台風が近づいているそうだから、それが過ぎれば、夏らしくなるのだろう。
浮雲 [DVD]
DVDで、成瀬巳喜男監督の『浮雲』を見た。突然こういうものを見ようと思い立つのは、こないだの『いつか読書する日』の残響でもあろうか?
それから、古本で買って永らくほこりをかぶっていた『伊東静雄 詩がたみ』という本を読んだ。詩人 伊東静雄の評伝であるが、宝文館という出版社から『うたがたみ・ふみがたみ』というシリーズで出版されたうちの一冊であるらしい。カバーもとれてしまっている。
叢書のなかの一冊でもあり、ざっと流して書いた感もあるものの、時代に翻弄された詩人の生涯を俯瞰に展望できた。中でも、親友、蓮田善明の運命を思うと、戦後、詩人の遺言で、全集から除かれた11編の戦争詩にも、傍流のドラマを感じざるをえない。戦争に負けました、ハイ、反省しました、みたいな簡単なことではなかった。
やはり、『八月の石にすがりて』、『水中花』は、名唱だと思うが、若い頃はなんだか物足りなかった『反響』以後、つまり、戦後の詩も、そんなに悪くなかったんだと思えた。
あとがきに

「彼の生涯については、名著小高根二郎氏の『詩人、その生涯と運命』があるのでそれをお借りした。」

とあるので、楽天で検索してみた。一番安いヤツで5400円、高いのだと一万円を超えている。これはあきらめた。
伊東静雄 詩がたみ』が、出版されたのは昭和45年、1970年。このころは、ちょっとした近代詩のブームだったかも知れない。今も昔も詩人でメシを食える人は少ないと思うが、バブル以前、物書きはマーケティングを念頭に置いていなかったと思う。
こないだ読んだ美術手帖のインタビューで森村泰昌は、まったく金にならない前衛芸術をやっている人たちから、「あいつはダメになった」と言われないように心がけていると言っていた。