本の話 絵の話

knockeye2006-05-19

本の話 絵の話 (文春文庫)

本の話 絵の話 (文春文庫)

これを書いている今は、土曜日の午前9:00。長雨が上がりつつあるように見える。6時ごろの天気予報では、すぐまた雨になるといっていたのだけれど。
夜中うとうとしながら山本容子の本を読んだ。「本の話」「人の話」「絵の話」の三部構成。「人の話」以外は、インタビューをまとめたものであるらしい。口述筆記で編集者の力によるところが大きい。くだけた会話体で読みやすかった。一晩で読めてしまうのは、「本の話」という雑誌の表紙絵の再録がかなりの分量であるからだ。うすうす気づいてはいたが、山本容子の銅版画はよいと確信した。
ラスコーの洞窟壁画の話が印象に残った。知らなかったけれど、教科書にのっているあの牛の絵、全長10メートルもあるそうだ。

現場に立って十メートル上にある巨大な絵を見て考えたのは、この暗黒の部屋の中で光源をつくり足場を組んで、このような絵を描いた人たちの心境ですね。そこまでして描きたい、描かなければならなかったものとは何だったんだろう。

もちろん呪術的、原始宗教的な動機という説明がなされているのは承知しています。しかし祈りにせよ呪いにせよ、ほんとうに切実なテーマがあった。ひきくらべて、現代の絵画にはそれに匹敵するほどの切実なテーマはあるだろうか、と思いました。

切実なことは今も昔もあるだろうけれど、たしかに洞窟の中に10メートルの絵を描くほど切実ではないわな。それを考えれば確かに気楽だ。
書くうちに曇ってきた。天気予報どおりのようだ。