『散るぞ悲しき』

散るぞ悲しき 硫黄島総指揮官・栗林忠道

散るぞ悲しき 硫黄島総指揮官・栗林忠道

太平洋戦争最大の激戦となった硫黄島の戦いのルポ。硫黄島は、巨匠クリント・イーストウッドが映画化することで話題になっているし、この本自体も大宅壮一ノンフィクション賞を受賞したりしている。これを書いた梯久美子という人が、これまたわたしと同年代ということもあり手に取ったが、硫黄島の激戦についてほとんど何も知らなかったので、興味深く読むことができた。ただ、わたしとしては文章がなんか新聞記事っぽくて好きになれなかった。家田荘子の文章に感じが似てる。プロのお手本どおりの文章という感じ。もちろん、それでよいので、よいから読んだのだけれど、これだと西牟田さんの『僕の見た「大日本帝国」』の文章のほうが、断然好きである。
正直言ってわたしは太平洋戦争をリアルに感じることはできない。わたしの世代でそれをリアルに感じることができるという人がいたら、間違いなくうそつきである。だが、遺族が戦死公報で呼び出されて役所に行くと、お骨を引き取るのに手数料100円取られたという話には無性に腹が立った。戦争の悲惨さがこちらの想像力をはるかに超える一方で、この話はあまりにリアルで、あまりにいやしい。こういういやしさだけが生き残るのかと思うとひどく悲しい。