- 作者: ジョンアーヴィング,John Irving,岸本佐知子
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2008/11/27
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で、先日の「シャイン・ア・ライト」について書いているブログを訪ねては、「そうだよねぇ、かっこよかったよねぇ」と、ひとりで相槌を打っている。
ジョン・アーヴィングがミック・ジャガーと同い年だと気がついてしまった。今度の「サーカスの息子」も日曜から月曜にかけてイッキ読み。読み出したら止まらない。
訳者のあとがきに、作家がこの小説を書くきっかけとなった出来事が紹介されている。
その夜、トロントに雪が降っていた。信号待ちのタクシーの中から、交差点に佇む初老の紳士の姿がアーヴィングの目に入った。中東か南アジアの人らしく見えたが、よい身なりでカナダ人になりきっているようだった。
「・・・私は知らず知らずのうちに彼のことをじっと見つめていた。そうしながら、きっとあの男は、この新しい祖国ではうまく言葉にすることのできない違和感を抱えて生きてきたのに違いないと想像した。車の中でそのことを考えつづけているうちに、ふいに小説のエンディングがそっくりそのまま降りてきた。
・・・彼をあの街角に連れてきた人生はどんなものだったか、その人生がいかに傍の人間には少しも気づかれないか、それを想像すると胸が高鳴った。」(Book Page誌 1994年 9月号)
「そっくりそのまま」というかぎりは、あのエンディングがそっくりそのまま降りてきたということなのだろう。
ふと目にするなにげない光景の背後にも、たしかに物語がつらなっているだろう。しかしながら、「この」物語は常人にはとても想像できない。まさにジョン・アーヴィングの世界なのである。双子の弟がボンベイに着いたときは、スラップスティックになるのかと思った。
書き忘れていたけれど、今回の舞台はインド。ジョン・アーヴィング+混沌の国インド。くらくらしそうですねぇ。
中身は読んでもらうしかないとして、時々顔を出す宗教談義が、わたしにはなかなか面白かった。インドらしく、ヒンドゥー教、イスラム教、シーク教、そして、カソリック、英国国教会。
エラスムスとルターの自由意志論、奴隷意志論論争なんて、多分ずっと若いころ、岩波新書で読んだはずである。あれは、キリスト教徒にとっては難問だろうが、他宗教の信者にはキリスト教の本質的な矛盾に見える。
ああいう到底解決不能な矛盾を平気で無視しつつ、「自分たちの宗教は論理的だ」などと信じ続けられるのが信仰の不思議なところだ。