「少年メリケンサック」

knockeye2009-02-14

佐藤浩市と「キム兄」こと木村祐一が、喧嘩別れしたパンクバンドの兄弟。それだけで観にいきたくなる。そうでしょ。
バンドの名前は「少年メリケンサック」。宮崎あおいがたまたま発掘した映像が注目され、彼女に全国ツアーがまかされるが、なんとその映像は25年も前のもの。いまやおっさんとなりはてた伝説の(だったらよかったんだけど)メンバーがふたたび集結する。
監督はグループ魂のギタリスト、宮藤官九郎。全編パンクへのリスペクトに満ち溢れている。パンクほどリスペクトという言葉が似合わないものもないけど。クレジットには遠藤ミチロウの名前もあった。
クドカンの映画は初見だが脚本の切れ味は鋭い。ピエール瀧を使ったフラッシュバックで過去のイキサツをたるみなく処理している。
反復する台詞やシーンも効果的だし、二つの親子関係が兄弟の関係と交錯して緊張が高まる仙台のライブシーンは忘れがたい。
脳の言語処理をくぐりぬけて入り込んでくるシーンや台詞がある。
たとえば、クレイジーキャッツ犬塚弘が、ベッドに起き上がって中指と舌を出すシーン。
たとえば佐藤浩市が自分のあごを殴って口から血を吐いて笑うシーン。
偶然だとは思うが、パンクは貧困と切り離せない音楽という意味で、まさに今という時代が渇望するものかも。
佐藤浩市が言う。
「俺たちは若いころは大人にバカにされて、おっさんになったら若いやつらにバカにされる。今更カッコつけてなんになる。やらずにいられるか。」
勝地涼田辺誠一など脇役の人物造形も見事だし、宮藤官九郎、ただものではない。