『サイレント・トーキョー』ネタバレ

 金曜日の18:00というタイミングのよさで、初日舞台挨拶付きの上映を観た。
 佐藤浩市は久しぶりの舞台挨拶に、一瞬、感極まって見えた。
 99分という短めの上映時間は監督のこだわりだそうだ。
 日本映画によくある欠点は、陳腐な倫理を、不徹底な映像の言い訳にしようとする傾向となって現れる。『TENET』と比較してみればよくわかる。『TENET』なんて、物理学者が考えてもよく分からない、つまり、ありえない世界を、リアルな映像にしてしまう。
 その逆は、臨場感のない映像しか見せられない代わりに、うすっぺらな道徳をトッピングするやり口だろう。そういう映画を見せられた経験って誰しもあるだろう。
 99分というこだわりは、疾走感のある映像を狙ったのだそうだ。半ばは成功してると思うが、しかし、実際の尺は長くてもあっという間に終わる映画もある。渋谷の爆破シーンはややくどかった。大金をかけたシーンが一瞬で終わった方がカッコよくないですか。99分のこだわりにはもっと別な意味があるのかもしれない。
 レインボーブリッジの爆破シーンはよかった。しかし、CGは弱いと感じた。
 回想シーンで、若い頃の佐藤浩市(を演じた人)が荒れている。それだけで、帰還兵だなと想像がつく。なので、戦場の回想シーンもくどすぎると感じた。現在の佐藤浩市の存在感だけで充分に語れる。
 品川遊郭を完全再現した『幕末太陽傳』なんかは、フランキー堺の言によると、「フランキーもの」のひとつくらいにしか思ってなかったそうなのだ。あの名作が、当事者の記憶では「ふつう」だった。あのクオリティを支えていた無数の無名の裏方の存在が結局大きかったんだと、今から振り返れば痛感する。

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