「小三治」

knockeye2009-03-22

浅草の鈴本演芸場、博多、北海道、名古屋と、各地の寄席や楽屋にカメラは回り続ける。
ふと気が付いてみると、私は客席にいるとき、噺家が舞台袖でどれほど真摯であるか疑ったことがない。だからこそ、セリフからオチまで知っている古典落語を飽かずに聴きにいける。
三年半カメラを回した映像から編集したということだ。
入船亭扇橋とのやりとりが、最高に面白い。あの味わいを書ける脚本家もいなければ、演じられる役者もいないだろう。
語られる言葉ももちろん印象深いのだけれど、たとえば、高座を降りた禽太夫が袖で師匠の噺を聞いている表情、三三が楽屋でひとり落語を繰っている姿、挨拶を済ませた後、隣り合う楽屋で座っている立川志の輔小三治の壁越しのツーショット、桂米朝の噺を袖で聴いているときの目、小三治の「鰍沢」をモニターで観ている扇橋、そういったシーンがむしろ忘れがたい。
落語を知らない人もきっと楽しめるだろう。
シャイン・ア・ライト」を、単にフィルムコンサートではなく映画にしているものは、ローリング・ストーンズへ寄せたマーティン・スコセッシの長年の敬意であろう。この「小三治」を映画にしているのもそれと同じものだと思うので。
ジャック&ベティはお気に入りの映画館になりつつある。
「ゼラチンシルバーLOVE」のときは、10:00ぎりぎりまでシャッターが閉まっていたのに、今日は行列が。高座なら珍しい光景でもないが、はて、と思いつつ近づくと、「ベティ」の方で上映される「沢田研二映画特集」の行列と気づいた。
かつてジュリーに熱狂したご婦人がたが「ザ・タイガース 世界はボクらを待っている」なんていう映画を観に来ているのも日曜の朝らしい。
ところで、バイク乗りとしても知られていた小三治師だが、リューマチのせいでバイクを止めたのだそうだ。今でも、雨に打たれてバイクに乗っている人を見かけると、あれが本来の自分だと思うことがあるそうだ。