NHKの「黙殺」という世論誘導

今週の「SPA!」の巻頭コラムに、勝谷誠彦
「これまで培ってきた検察に対する国民の信頼をドブに捨てる覚悟でそれ(民主党が公言している霞ヶ関改革に対する牽制)をやるならやればいい。

しかし私が看過しがたいのは、大マスコミすべてが」
それを囃したて、お先棒を担いで「世論」を作ろうとしていることだと書いている。
週刊文春上杉隆郷原信郎櫻井よしこの小さな鼎談も、すでに今回の検察の捜査に無理があることを前提として進められている。
少なくとも、わたしが購読している地方新聞には、検察への批判が載せられていた。全国紙は読まないのでどうだか知らない。(オウム事件以降全国紙は読まなくなってしまった。)
ネットでの検察批判のありようは前にも書いたとおり、すでにアンケートが行なわれていて過半数の意見が検察を批判している。
という状況であるにもかかわらず、NHKがこの問題をいっさい黙殺しているのは、報道機関としての責務を放棄しているのだろう。
それで思い出してしまったのは、「従軍慰安婦番組改編問題」。主要登場人物が、“かの”中川昭一氏であることと、今回のNHKの組織的な黙殺ぶりを考え合わせるとおのずと答えが導き出せそうだ。
そもそも放送の前日に安倍普三に番組内容を説明したことは明らかになっている。NHKは放送内容について自民党幹部にお伺いを立てていた。そのことについては、あの時点でもはや隠すつもりさえなくしてしまっている。
結局、なんだかうやむやのうちにNHKの主張が通ったかたちになったと記憶するが、このときに検察に借りができたのだろうか。それとも所詮そういう体質というだけのことかもしれない。
田中良紹氏は、「SPA!」に寄せた記事で、今回のことは、'07年に民主党参院選に勝利して以来の大きな流れの一貫に過ぎないと指摘している。
参議院民主党にとられた後、自公政権がとった手は、まず大連立構想、つぎに、例の姫井由美子が一日で離党を撤回した切り崩し策、そして、今回のことと続くわけである。
何ヶ月か前、麻生政権の支持率が急降下したころ、
事務次官クラスの官僚が小沢一郎詣でをしている」
という小さな記事を見かけたと記憶している。
どういうことだろうといぶかしく思っていたのだけれど、今から思えば、小沢一郎民主党の腹を探っていたらしい。
この一連の動きは、戦時中に築かれたいわゆる「1940年体制」を死守しようとする官僚の強いあがきのあらわれだろう。
民主党は官僚がかなり無茶なことまでやって抵抗するまでには追い詰めているようだ。