不思議な小沢一郎

ゲームを動かしたのは結局小沢一郎だったということ。
岡田克也がもし本気で次の代表を狙うつもりであったなら、自分でゲームを動かさなければならない。つまり、小沢一郎が辞任するかしないかの段階で、根回しをしておかなければならなかった。小沢一郎と接触しておくべきだったのである。
いずれにせよゲームを支配しているのはまだ小沢一郎にはちがいない。その意味で辞任のタイミングは絶妙だった。
しかし、小沢一郎という人はつくづく変な人だなと思うのは、今回の大久保秘書逮捕については、わたしのような素人目にでもその異常さがはっきりとわかる。
まず、逮捕のタイミングがおかしい。国会の審議に影響を及ぼさなかったとはとてもいえない。
そのうえ、逮捕そのものもおかしい。
多くの人が指摘している通り、あんな程度のことで、即逮捕なら国会は空になってしまう。
現に次から次へと自民党議員への献金も明らかになってきたが、そちらには検察は一切手をつけていない。小沢一郎の場合は、「表の金」であるのに対して、現職閣僚には明らかに複雑な迂回融資が行なわれていたにもかかわらず、野党の党首の「表の金」にだけ手をつける態度が公平であるはずがない。
そして、報道の態度がおかしい。
検察リークの垂れ流し報道は、報道への信頼を踏みにじる行為である。
そのリークを流している側の検察官には明らかに違法の疑いがある。
そして、偏向報道の問題。
二階大臣の秘書が事情聴取されたときには、地方紙の片隅と新聞サイトのひとつにだけしか記事にならなかった。
漆間発言にも疑問がのこる。
加えて、今までの経緯も援用することができる。
まず、検察の倫理の箍がはずれ始めた一例として、記憶に新しいのは鈴木宗男のケース。あるいはライブドア事件。そして三井環事件までも遡ることができるだろう。
NHKが報道機関としての自律性をかなぐり捨てたケースとしては、従軍慰安婦番組改竄事件があげられる。
今回の西松事件が巨額だという報道には苦笑してしまう。私がもらったのなら確かに巨額だけれど、野党第一党の党首に年間500万くらいの献金が巨額ということになると日歯連はどうなるのか。そんな金額では秘書一人雇えないはずなのだ。
全体を通して見ると、検察の政治介入と、その検察にすり寄るマスコミという構図が素人にも苦もなく俯瞰できる。
検察があからさまな政治介入をするならば、国権の最高機関として、国会は検察権力の暴走を弾劾してほしい。
民主党が検察批判でまとまれたなら、勝算は十分にあったと思う。
にもかかわらず、小沢一郎は大久保秘書逮捕以後いちどもテレビに顔を出さず、口をつぐんだままだった。むしろ周辺が熱くなっていたくらい。
これだけの材料があれば、説明責任云々というよりも、むしろ、国民に説明するよいチャンスだったと思うのだ。
しかし、小沢一郎という人はそれをやらない。私にはそのことが非常に不思議だ。
確かに言いたいことはわかる。今回のような茶番劇、説明しなければわからないなら説明してもわからない。ある意味では、現場にいる政治家の目から見て、それが今の国民のリアルなのかもしれない。
この辞任のタイミングと鳩山由紀夫の代表就任はそういう意味なのだろうと受け取っている。