週刊朝日の記事から

帰省する新幹線のホームで週刊朝日を買った。
「続・検察の劣化 徹底検証『小沢秘書逮捕』とマスコミ報道」
という記事が気になったので。
その記事の中で触れられていたので思い出したが、三井環事件というのがあった。
2002年に検察の裏金を暴露しようとして、逮捕されてしまった元大坂高検公安部長がいた。
このサイトによれば

検察庁が国民の血税である年間5億円を越える調査活動費の予算を、すべて私的な飲食代、ゴルフ、マージャンの「裏金」にしていることを、現職検察官として実名で告発する

テレビ番組を収録する予定だったその日に緊急逮捕されてしまったそうだ。
今回、大久保秘書が逮捕されたのは、しつこくいうようだけれど、与野党が最も対立していた定額給付金関連法案を、与党内からも疑問の声が上がっていた衆議院での三分の二条項を使っての再議決をするという、その前夜も前夜だった。
逮捕をそのタイミングで決行した意図は、あまりにも露骨で、むしろこれ見よがしといっていいだろう。
記事は、魚住昭郷原信郎の対談という形で進められている。
郷原氏は、事件の最初から、今回の捜査が「意図的で計画的な」政治介入ではなく、単にお粗末な「失敗捜査」だと指摘してきていた。私としてはそれは少し善意に取りすぎているのではないかとおもうが、ただ、郷原氏がもっとも問題視し訴えたいと思っているのは、このような明白な検察の失点をマスコミがほとんど批判せず、それどころか現政権に有利なように世論を操作したことなのだと、私は思う。
魚住氏が
「皮肉っぽく言えば、」
と前置きをして、今回の「西松建設事件」をめぐる報道は、従来の検察報道に比べればかなりマシだともいえるのではないか、と言ったのにたいして、
郷原氏は、元検事という立場から、
「今回の事件は、これまでの特捜事件とはまったく違う”異常”な捜査だと思います。その異常性からすると大手新聞やテレビの検察批判は、全然足りない。
結局、基本的にはこれまでと同様、検察の意向に沿った報道でした。それは、日本という国が実は、物凄く遅れた国だということで、暗澹たる思いです。日本は近代国家・法治国家だと思っていましたが、実は違ったのです。」
と言っている。
特に、ニュースと天気予報以外に仕事がないはずのNHKが、検察のリークによる誤報を垂れ流したあと、知らぬ顔を決め込んでいることには唖然とせざるえない。
その一方で、「小沢代表では選挙が戦えないという意見が民主党の一部から聞こえている」などという報道を平気な顔で流している。
民主党の誰がそんなことを言っているのか知らないが、もし、本気でそんなことを言っているのだとすれば、高野孟が指摘している通り
「無様としか言いようがない」
何度も書いている通り、私は民主党を応援したいと思っている。応援しているのではない。
今回の大久保秘書逮捕は検察の明白な政治介入である。民主党は政権をとって一体何をやるつもりなのか。官僚の政治支配と戦ってくれることを期待して、またこれまでの菅直人小沢一郎の政治姿勢からして期待できると思うからこそ政権交代を実現してほしいと思っている。
今、検察がやっているこの露骨なやり方こそ、官僚の手法そのものではないか。この程度の揺さぶりにおろおろしていて政権を獲った後、まともに官僚と戦えるのか。
今回のことはむしろ民主党が官僚と戦う姿勢を国民にアピールするよいチャンスではないか。
小沢一郎辞任は官僚の思うつぼである。前にも書いたが、もし、小沢一郎逮捕ということになっても、獄中の党首を守りぬけ。そこまでやれば、ロシアの農奴みたいな頑なな国民にも少しは真意が届くだろう。
大久保秘書逮捕以降、総理大臣が漢字を読めないのをいいことに、官僚は既得権益の防護壁を強化してきている。敵は、麻生太郎中川昭一鳩山邦夫といった輩ではない。政権交代自体が官僚支配打破に向けての第一歩であることは理解できるが、その先にどのようなビジョンを示せるかに国民の信頼が得られるかどうかがかかっている。トップの首を挿げ替えるかどうかではない。
新横浜から横浜へと向かう電車が東神奈川の手前で緊急停車した。人身事故だそうだ。この帰省は往きも還りも人身事故だった。私はキリスト教徒ではないので、自死という選択を否定しない。しかし、本来その人たちの保護に当てられていいはずのカネが、天下りの権益を守るためにバラマかれているとしたら、ひどく悔しいのではないかと思う。