「川は静かに流れ」

川は静かに流れ (ハヤカワ・ミステリ文庫)

川は静かに流れ (ハヤカワ・ミステリ文庫)

なんか推理小説を読むのも久しぶりな気がする。
ハリイ・ケメルマンの「9マイルは遠すぎる」
以来か。
でも、あれは短編だから長編となると
恩田陸の「中庭の出来事」
は、しかし、本格推理小説と思って読んでいないから、そうなると、去年の十月。
恩田陸の「ユージニア」
以来。「ユージニア」は名作だった。
最近、一人称の小説というのが体質に合わなくなってきている。
犯人は最後までわからなかった。テレビの二時間ドラマでいうと、最初に登場するシーンでだいたい犯人がわかるけれど、その手法であたりをつけていたやつは違っていた。
アメリカの田舎って露骨に保守的という先入観がある。
阿部謹也が、アメリカ人の先祖はメイフラワー号で近代化するイギリスを逃れてきた中世の難民だ、みたいな(わたしなりの解釈だけれど)ことを書いていたと思う。
それを読んで以来、わたしにはアメリカの保守主義とかキリスト教保守主義とかが中世の迷信と重なって見えるようになった。なにせ、進化論や地動説を教科書に載せるな、とかいう裁判が闘われる国なのである。
先日、イチローの復帰戦が、ジャッキー・ロビンソンのメモリアルデーということで、出場選手全員が背番号42をつけてプレーしていた。
差別と闘ってきた事実をしつこいくらいに確認しておこうというアメリカ人のそういう態度が、このところ切実に重要に感じられる。
直前の選挙で最大の争点だった郵政民営化を、その同じ政権の総理大臣が「実は私は反対でした」とか発言して、殴り殺されずにすむ国は平和なのかバカなのか。
日本の民主主義はアメリカに押し付けられたなどといった批判をよく耳にするが、そういう人たちに私は「押し付けられたけど、根付かなかったから心配しなくてもいい」といってあげたい。
「川は静かに流れ」の評価はいろんなところで高いので、推理小説ということもあるし、内容についてはふれずにおく。
全くどうでもいいことだけれど、献辞の長さにはびっくりした。献辞なんて「古き師と少なき友へ」とかいう程度のものが普通なのである。インディ500の優勝インタビューかと思った。