希望退職

6月に入って勤め先が変わった。といっても、私が変わったわけではなく、勤めていた会社が勝手に変わったのである。
戦後最大の大不況は、もちろん私の職場も直撃している。富山の某中堅企業の子会社である私の職場は、本社の一部書と統合して新しい組織に改変することにしたようである。
「ついては、若干名の希望退職を募ります」
ということで、もともと少人数でやっている職場からさらに人を減らした。
「希望退職って、この時期に誰が応じるかよ」
と思っていたのだが、4人も辞めちゃった。
そのうちのひとりは、このブログでもときどき言及している、勤務中に飲酒する問題社員で、この人に関しては今まで雇い続けているのが謎だったのだから、希望退職といい条、事実上クビなのである。
もうひとり会社からお声がかかったのは、まだ入社して半年になるかならないかの人で、詳しいことは知らないが、まだ日も浅いという以上の理由はないのだろう。ひどい話。
あとの二人は、ほんとに希望退職。
ひとりは、わたしと同じころに入社した若い人で、この会社にイヤ気が差したのだろう。それは無理もない。
もうひとりは、十年以上も勤めていて、パートから正社員になった女性で、この人が辞めるについてはショックを受けた。というのは、熟練が必要な部署ではあるし、会社としては、せっかく育成した技術をみすみす失うことになるからで、辞めるといわれても慰留に努めてもいいはずだと私は思ったからだ。
もちろん、彼女はダブルインカムなので、辞めても世帯主の男性たちに比べれば家計への打撃は小さいに違いない。
しかし、彼女の退職は、こんどのことがやみくもな人員削減で、長期的計画などないのだという充分なアナウンス効果を果たした。
奇しくも、大前研一がブログの最新エントリーで、日本の企業は目前の四半期のことしか考えられず、長期的視野を持てなくなっていると警鐘を鳴らしていた。
今年の初めまで四人いた私の部署は、いまやわたし一人である。今回の人員削減は、ここが子会社であることから考えて、親会社の余剰人員をこちらにまわすことを狙っているのかと思っていたら、そうでもないのだ。ほんとに一人でやらせるつもりらしい。
アル中の問題社員が辞めたことは喜ばしいが、いくらヒマでもひとりでは、そりゃつらいよ。長期的展望どころか、だいたい、今日はじめて新社長の名前を聞いたところである。
先のことはなるようにしかならないけどね。
この何年間か、悩まされてきたアル中の問題社員は、希望退職の話が出た直後から、今までそんなことしたこともないのに、定刻の30分以上も前に出社していた。ヒマで仕事がないっつってるのに。
それが、五月のあたまくらいのことで、事実上解雇を言い渡されたのは、GWの前日だった。
アル中というのは、私がそう推測しているだけだが、おそらく間違いないだろう。
いくらなんでも、勤務中に酒をあおるか?
取引先からの差し入れだったので、全員が貰っているわけだけど、当然ながら勤務中に飲んだものは彼しかいない。
アル中は酒が目の前にあると我慢できないのだ。
理解できないミスと職場放棄も、たいてい給料日の前後だということには気がついていた。
アル中はほどほどに飲むということができない。飲み始めたら辞められないのだ。
もし酒を飲んでも仕事をちゃんとしてくれていれば私として何の苦情もない。でも、仕事ができなくなるまで飲んでしまうのがアル中なのだ。アル中はわが子を売りとばしても酒を呑むものだそうだ。
あるときから私は彼を同僚と考えるのを辞めた。それは、勤務中の飲酒がばれたときに、差し入れの酒を私がジュースだといって渡したからだと上司に言い訳をしたと聞いたからだった。
ただ、これだけは言っておきたい。今回の解雇には納得できない。彼の飲酒が問題になったときに、私は「解雇しろ」と言った。しかし、会社はなんだかんだときれい事を言って解雇しなかった。ところが、状況がこうなると、見境なく首を切る。
逆だと思う。問題社員は解雇して、不況のときには雇用を守るべきなのに、問題社員の雇用は守って、不況を理由に人員を減らしたのである。