中国人船長釈放についての推測

内閣改造後、外相に就任してからの、前原誠司の動きは速かったし、正確だったと思う。
中国ではなく、まずクリントン長官と会談して
東シナ海には領土問題はない。国内法で粛々と対応する。」
と確認し、
また、クリントン長官の口から
「(尖閣諸島に)安保条約は明らかに適用される。」
という明言も引き出した。
これで、中国は、今回の衝突事件について、日米同盟を相手にせざるえなくなった。
一方で、日本は、普天間問題をめぐってぎくしゃくしていた日米関係を修復する手がかりもつかんだ。
前原あなどりがたし、と思っていた。
と、ここまでは昨日までの状況。
ところが、今日、仕事を終えて帰ってくると、中国人船長が釈放されている。
これでは、クリントン長官に言った
「国内法で粛々と対応する」
という前原外相の言葉は、コケにされたも同然だ。
中国政府はチャーター機まで用意するという喜びよう。
(?)と思っていたら、
仙石官房長官の記者会見によると、
「地検独自の判断だ」
とのこと。
なるほどと
(ここから先は、ブログならではの私のまったくの推測にすぎないので、何の根拠もない。しかし、このところ触れてきたことだが、そういう‘推測’をしないで、マスコミのいうことを丸呑みする人が多すぎるように思う。ちょっとは疑ってみてもよいと思う)
思い当たったのは、佐藤優が、週刊SPA!のインタビューで言っていた
政権交代後、‘官僚’という階級と、国民によって選ばれた‘政治家’との権力闘争が続いています」
ということだ。
佐藤優によれば、普天間問題は、
「 官僚にとって‘日本国家の支配者は我々である’ということを示す象徴的事案でした。
 外務官僚と防衛官僚の決めた辺野古案になれば、日本国家の支配者は官僚ということを国内外に示すことができる。
 つまり、‘国家の主人は誰か’ということをめぐる闘いだった」
ということだそうだ。
今回、日米同盟をてこに、これから交渉という矢先に、地検が独断で船長を解放してしまったことは、
政治家主導の外交は絶対に行わせない」
という、官僚の異常な権限意識が白日の下にさらされたのだと思う。
今の段階で、件の中国人船長をむざむざ釈放することが、優秀な官僚の選択だろうか?これでも、日本の官僚は優秀だといえるか?
いま、官僚にあるのは‘選良’意識ではなく、佐藤優のいうように‘階級’意識と呼ぶのがもっとも正確だろう。
自分たちの権限を誇示するためには、領土問題や日米関係という、国益を損なうことすら躊躇しないのだから。