電力自由化の遅れが日本のものづくりの息の根を止める

 つらつら日経WEBの記事を拾い読みしてみる。
 岩手県達増拓也知事は2日、ソフトバンクと全国の自治体が7月上旬につくる「自然エネルギー協議会」に参加する方針を表明した。被災3県で初めて。
 ソニー沖縄県自然エネルギーを効率的に利用するための実証試験を始めた。
 パナソニックは、中国不動産大手と提携し、大連のエコタウン「大連ベストシティ」構想に参加し、住宅やオフィスビル向けにエネルギー制御システムや防犯システムなどを一括して提供、神奈川県藤沢市で進める「エコタウン構想」を海外に広げる足掛かりとする。
 パナソニック日揮三井物産は連合して、インドネシア太陽光発電システムの受注を目指すなど、太陽電池メーカー、プラント企業、商社がチームを組み、東南アジア、中南米など地域別に5つの連合をつくり、数百億円規模の大型プロジェクト獲得に乗り出す。
 このプロジェクトに参画する企業は、パナソニック、カネカ、シャープ、JX日鉱日石エネルギー、ソーラーフロンティア、京セラ、明電舎、JFEエンジニアリング、横河電機千代田化工建設東芝日揮三井物産双日、三菱UFJリース、丸紅、三菱商事
 また、国内でも、山形県庄内町にある建設資材会社、安藤組が自然エネルギー事業に参入する。
 機械商社の山善は賃貸アパートなど集合住宅向け家庭用太陽光発電システムの販売に参入する。
 サンケイビルは2011年7月からJX日鉱日石エネルギーの「ENEOSマンション向け戸別太陽光発電システム」に東京ガスの高効率ガス給湯器「エコジョーズ」を組み合わせたマンションを販売する。
 ヤマダ電機は蓄電池の取り扱いを拡大する。7月1日から蓄電池製造ベンチャーのエリーパワー(エリーカを作っている会社だ)製の取り扱いを始める。
 森精機製作所再生可能エネルギー関連事業に参入する。資本・業務提携を結ぶ独ギルデマイスターの子会社が生産している、太陽光発電パネル向けの太陽光追尾システムや電力を貯蔵する2次電池を扱う。
 神奈川県は14日、太陽光発電装置を取り付ける一般住宅向けの補助金について、2011年度の支給対象を当初予定から倍増し1万2200件にすると発表した。
 静岡県は企業が大学や公設試験研究機関などと連携して自然エネルギー関連の研究・開発を行う際、費用の一部を助成する。また、11年3月に策定した「ふじのくに新エネルギー等導入倍増プラン」で、太陽光発電を2020年度末までに10万軒で導入する計画を打ち出している。
 福島県有識者会議「復興ビジョン検討委員会」は30日、復興の基本方針の提言案に「再生可能エネルギー特区」の導入を盛り込む方針を決めた。
 マスコミ、自民党経団連会長などがタッグを組んで、既得権益を守り抜こうとしても、いまや日本中の企業が、再生可能エネルギーへと、なだれをうって走り始めている。
 その一方で、大きな障害として浮上してきているのは、電力自由化の遅れのために、日本のものづくりすべてが、世界からおいてけぼりをくう危険性だ。
 なぜなら、日本以外の国で、スマートグリッドが普及すれば、家電のすべてがスマートグリッド対応のものでなければ売れなくなるからだ。
 テレビ、冷蔵庫、エアコン、洗濯機、照明器具など、すべてのものが
「日本製?スマートグリッドに対応してないでしょ?」
で、終了してしまう。
 iPodとwalkmanに起こったことが家電全体で起こるのだ。
 米倉経団連会長は、電気料金が高くなれば、企業が国外に逃げていくと言っているが、スマートグリッドで後れをとると、それどころではすまない。
 実際には日本の電気料金は、電力が自由化されているアメリカの2倍近い。それなら、米倉会長は、早く電力を自由化しろと政府をつつくべきではないのか。
 谷垣総裁や米倉会長は、口をそろえて、‘菅直人辞めろ’と唱和しているが、いつまでも電力自由化反対の姿勢を貫いていると、その‘辞めろ’の声が、今度は自分たちに向いてくるかもしれないと覚悟しておくべきだろう。
 上にあげた日本の経済を支える企業の多くのプロジェクトが、米倉会長と自民党の妨害のために停滞する、という事態になれば(すでになりかけている予感もある。谷垣総裁は、‘菅孫民卑’などとくだらないだじゃれで、孫正義を攻撃しているし、米倉経団連会長が電力自由化に徹底抗戦していることはすでに書いた)、「米倉と谷垣がいてはダメだ」という悲鳴が、産業界から上がってこないだろうか。なぜ民主党執行部が、自民党と一蓮托生の道を選び続けるのか意味がわからない。
 今日、日経平均株価が、二ヶ月ぶりに一万円台を回復した。
 このことと再生可能エネネギーを関連させるつもりはないが、ただ、銘記しておかなければならないことは、世界中のどの原発も政府の補助金漬けであること。とりもなおさずそれが官僚や族議員の権益の源泉なのだが、一方で、投資家はリスクが大きすぎて手を出さない。つまり、原発は、ハゲタカすらつつかない。原発は経済をまわしていかない。
 原発依存の構造は、いずれにせよ、乗り越えていかなければならない負の遺産なのである。