静嘉堂文庫、駒井哲郎、等覚院の躑躅

knockeye2012-04-29

 この週末は、ひといきに気温が上がって、きのうもきょうも夏日、最高気温が25℃前後になったようだ。ほんの数日前には、タートルネックを着ていたのに、この二日間は半袖のシャツで、薄い上着をはおったのも紫外線対策という、なんとも急激な変わりようだった。
 日曜日は、世田谷の二つの美術館を訪ねた。
 ひとつめは静嘉堂文庫美術館で、東洋絵画の精華、第一部、珠玉の日本絵画コレクション。シャガの花が盛りだった。
 この美術館はちいさいけれど、展示の内容はいつも充実している。今回は、所蔵の<平治物語絵巻>の信西巻が展示されているが、これは現存する三巻のうちのひとつだそうで、残りのふたつは、いま東京国立博物館で開催されている「ボストン美術館 日本美術の至宝」で展示されているボストン美術館所蔵の「三条殿夜討巻」がひとつと、あとひとつ、東京国立博物館所蔵の「六波羅行幸巻」は、同館の本館2室・国宝室にて展示中。この三館で相互割引をするそうだ。
 酒井抱一の六曲一双の銀屏風、<波図屏風>、鈴木其一の<雨中桜花紅楓図>、尾形光琳の<鵜舟図>、円山応挙の<江口君図>。
 なかでも、楽しかったのは、<四条河原遊楽図屏風>。四条河原というからには、鴨川でなければならないが、江戸時代初めの鴨川はこんな風だったのかなと思うと、不思議な気がする。左双の左上の舞台で輪になって踊っている華やかな女性たちをみていると、江戸川乱歩の「押し絵と旅する男」ではないけれど、絵の中に吸い込まれそうな魔方陣のような妖しささえ感じる。
 右双の左下には、不思議なものを頭にかぶっている人たちがいる。生け花にしか見えないのだけれど、色とりどりの生け花をかぶって三味線を弾いているようだ。右上の赤い幔幕に白く染め抜かれた富士の山に一文字が印象的。もしかしたら、この絵のパトロンと何か関係あるのかもしれない。
 昔の人は、こうした絵を眺め暮らしては、思いを遊ばせたのだろうと思う。
 ところで、円山応挙の<江口君図>は、最晩年の作品だそうだが、遊女を普賢菩薩に見立てて、坐らせているゾウのどっしりとした重量感と、それにふんわりと腰掛けている女性の軽さのコントラストがみごとで、衣文越しに女の尻のやわらかさが伝わってきそう。
 府中美術館で見た<楚蓮香図>では、長澤蘆雪の方が生き生きとしているかなと思ったけれど、こうしたかちっとした決めのポーズは、応挙の独壇場のようである。
 からりとした五月晴れの日だったので、野々村仁清の京焼の茶壺が、大きな窓ごしの青空に映えて美しかった。
 世田谷のもう一つは、改装なった世田谷美術館で駒井哲郎の回顧展。町田で一度見ているのだけれど、なにかしら心惹かれる。
 <束の間の幻影>などの代表作は憶えていたけれど、今回は<樹木 ルドンの素描による>が心に残った。ルドンの展覧会を見たせいだろう。ルドンが生涯手許においていた樹木のスケッチを版画にしたものである。
 町田の時より展示が変わっているかなという気もした。多分憶えていないだけだ。金子光晴の「よごれてゐない一日」をまた読みたかったのだけれど、別のページが展示されていた。世田谷では前後期に分けて展示するそうだ。町田ではどうだったかこれも忘れた。
 このあと、小田急沿線シリーズというわけでもないのだけれど、等覚院の躑躅を訪ねた。まだすこし早い。今週末くらいが盛りかも。