決める人

knockeye2012-08-01

 野田佳彦の政治姿勢を‘決める政治’などと評価している連中にいっておきたいのは、この男の‘決める政治’は今に始まったことではない。永田メール事件のときも、これを国会で取り上げると‘決めた’のはこの男で、その結果、永田議員は自殺に追い込まれた。
 決断力があるから決められるのではない。状況判断ができないから、何でも簡単に決めてしまうにすぎない。官邸を取り巻くデモを、ただの物音としか判断できない男なのである。今度この男の‘決める政治’で犠牲になるのは誰か、考えると空恐ろしい。当時は野党の国対委員長に過ぎなかったが、いまは一国の首相なのである。

書架記 (中公文庫)

書架記 (中公文庫)

 吉田健一の『書架記』を読み終わった。といっても、原書の部分はすっ飛ばして読んでいるのでなんにもならないというご批判、ごもっとも。
 ただ、いまさら、ボードレールジョン・ダンも原文で味わえるほど外国語に堪能になれるか!っていったとしても、これは逆ギレとはいわれないだろう。しかし、
 「この時代の英語の限界を考えると・・・」
みたいなことをいえるまで、英語に堪能であることが、教養人に求められたとしても、それは考えてみれば当然のことだった。それを当然のこととして、吉田健一はこの本を書いている。
 近年、ゆとり教育とかが問題視されたわけだったが、ゆとり世代にかぎらず、戦後ずっと、このような教養を否定する方向へと歩き続けてきたこの国だったように思う。
 竹中平蔵が、日本で開催された何とかいう国際会議に参加した時のエピソードで、英語で話し始めようとすると、ある参加者が、
「日本語で話して下さい」
と言ったそうだ。
 この臆面のなさがすごいと思う。この場合‘すごい’というのは、語源通り‘ものすさまじい’という意味だ。
 野田佳彦

「『三丁目の夕日』の時代は、今日より明日がよくなると皆思っていた。そういう時代をつくりたい」。野田佳彦首相は(7月)27日の参院消費増税関連特別委員会で、映画「ALWAYS 三丁目の夕日」を引き合いに、自らが理想とする時代について力説した。  

とのことで、はてなブックマークで話題になっているとおり、ありとあらゆる意味でまちがっているのだが、間違いを指摘するのが簡単すぎて、書いても読んでも面白くない。
 しかし、なによりも‘消費増税関連特別委員会’で、これを言っていることが決定的に矛盾している。「三丁目の夕日」時代、つまり、高度成長期が終わったからこその、消費税増税でなければならないはずである、もし、論理的な熟慮の末に増税を決めたのならば。
 ‘決める政治’の頭の中身がこれなわけ。一応もう一点指摘しておくと、「三丁目の夕日」は映画だし。先月、映画と現実の区別が付かない発言をしたもう一人の男に、ジェイムズ・ホルムズがいる。この男も‘決める’タイプで、毅然として引き金を引いたようだ。