‘慰安婦問題という名の泥沼’

knockeye2013-06-09

Newsweek (ニューズウィーク日本版) 2013年 6/11号 [慰安婦問題]

Newsweek (ニューズウィーク日本版) 2013年 6/11号 [慰安婦問題]

 ニューズウィーク日本語版の6月14日号に、橋下発言についての詳細な検証が掲載されている。
 河野談話村山談話が成立する背景、橋下発言の、どの部分に米国が怒り、それは、韓国の反応とどうちがっているのか、そして、そもそも慰安婦問題とは何なのか、といったようなことが詳細に記されている。
 こうした誌面の作り方にふれたあとで、朝日新聞週刊文春の記事を思い返すと、要するに、あれは橋下徹のつるしあげだけが目的の、ゴシップ記事にすぎないことがよくわかる。
 それでまあ、またニューズウィークを年間購読することに決めた。結局、紙媒体のほうがわたしには読みやすい。
 日本のマスコミにジャーナリズムを期待しなくなったのはいつごろからか、もう忘れてしまったが、確か、松本サリン事件のときには、もう新聞を読むのを止めていたと思う。
 ともかく、従軍慰安婦が‘事件’となったのが、1991年だと知ると、軽々に判断できないという、ちょっとした予防線みたいなものが心のどこかにできる。
 1972年に、横井庄一がグアムで発見されたときは、その事実を疑ったアメリカ人も多かった。「ウソだろ?」というわけ。まだベトナム戦争終結しておらず、それだけ、戦争が身近だったといえるのではないか。
 それなのに、1991年に、従軍慰安婦の事実が明るみに出たとき、誰もがすんなりと信じるのは不思議な気がする。おそらく、戦争全体のイメージがうすらいだために、隠されていた恥部といった部分に強く反応したのだろうと思う。
 その批判の原動力となっているものは、立証された事実ではなく、各人に喚起されたイメージだと思うがちがうだろうか。わたしたちが、従軍慰安婦について何を知っているかと振り返ってみると、事実は曖昧模糊とした霧のなかに消えていくのではないだろうか。
 自分でネタを振っておいて、オチがつけられなかった橋下徹の拙さもひどいものだが、しかし、一政治家のつるしあげ(朝日新聞の場合はほぼ意趣返しにすぎない)のために、自国の名誉を傷付けても平気という日本のマスコミは、やはり、一読者の立場としても、これに金を払う値打ちはないと思う。