- 作者: 村上春樹
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2013/04/12
- メディア: ハードカバー
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しかし、今年もノーベル賞を逃したって、そもそもほぼすべての作家が逃すわけで、それを毎年のように、今年もと言われるほうがすごい。といいつつ、アリス・マンローも注文しました。
『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』は、なんか短編小説のような読後感。余白がありすぎて余韻が足りない。
わたしは、アカ、アオ、クロさんの説明は納得できない。というのは、つじつまが合いすぎている。ほんとは(ほんとは?)、この三人のストーリーが食い違っているはずだと思う。16年前の記憶が、供述調書みたいに一致しているなら、巡礼の必要がない。ハガキで済んじゃう。
それと、六本目の指、灰田くんのオチがつかない。六色目の緑川さんのエピソードがもういちどでてきてもよいはずだった。そうでないと、せっかく(せっかく?)色彩を持たない多崎つくるがアカ、アオ、シロ、クロ以外の色に出会った意味がなくなる。
そういうわけで、もっと拡がるはずだった物語が途中で閉じちゃった感じはある。
でも、六本目の指は面白い話だな。色彩を持たない多崎つくる自身が六本目の指だったと考えると、そうした選民意識と巡礼はどう結び付くのか。
シロをレイプしたのは誰か、それもはっきりしていない。多崎つくるを含めて三人の男性の中の誰かなのか、それとも、他の誰かなのか。シロ自身が、ビアノを教えている子供たちの誰かと関係を持っていた可能性もある。ホントにレイプされたのなら、つくるの名前を挙げる必要がないのだし。
あるいは、ほんとにつくる自身かだけど、もしそうなら、性夢は見そうにない。だからやっぱり、その性夢にでてくる灰田の存在が後半にも必要だったように思う。
それから、蛇足というか、余談というかだけど、全然関係のない話をここに書いておくのは、おなじ‘村上’つながりというだけで村上隆のことなんだけど、Twitterで村上隆をフォローしていると、村上隆自身がリツィートした村上隆批判のツイートに出くわす羽目になる。
それを読んでると、村上隆のしたたかさがよくわかる。こないだも
「ぶっちゃけ、日本のサブカルチャーを作り上げて来た人たちからは、村上隆は盗人扱いですからね。」
というツイートがあったわけ。これなんか
「日本のサブカルチャーを作り上げて来た人たち」
っていうあたりが、個人的には、さむいというよりざらつくんだけど、でも、それについてうっかり反応したりして、そういうところにinvolveされると、村上隆の思うツボだしと思うと、彼にしてみると、こういう誹謗中傷みたいなのも、けっこう余裕で楽しんでいるらしいと見えるわけ。たいしたもんだと思うわ。
で、こっそりここに書いておくわけ。目立たないように。