中澤弘光展

knockeye2014-09-24

 横浜そごう美術館でやっている中澤弘光展に、これは初日に出掛けた。
 なんか今年のお盆休みに実家に帰って、鑑定団を観ていたら、この人の「潮風」という絵が‘発掘’されてた。
 ちょっとタイミングよすぎる感じではあるんだが、それはそれとして、いい絵だなと思ったんで、観にいこうと思ってた。
 ごく若い頃から絵はうまいが、この展覧会の中で、いちばん目を惹くのは、1926年、52歳の時に描いた「花下月影」だろうと思う。
 西行法師の「願わくは花の下にて春死なむそのきさらぎの望月のころ」から構想した、という話だが、だとしたら、「お見立て」というやつだろう。色っぽすぎる。
 私が改めて考えるのは、大正15年に、日本の画家がこのくらい思いっきり耽美的でありえたという事実で、なんでこの15年後くらいにクソみたいな戦争に突き進んでいったのかっていうのが、まったく不思議。
 たぶん、軍部に予算使わせすぎだったんだろう。天皇統帥権をたてに、好き放題カネをつぎ込んだ結果、あほな戦争をせなならんことになったんだろう、あほだから。
 その視点でいうと、税金の使い道をコントロールするのが、政治のいちばんの役割だと思うし、近年、それができていたのは、竹中平蔵だけだったと思うので、その意味で、わたしはあの人の政治姿勢を評価している。
 話がそれたついでにさらに続けると、本来、マスコミの役目も税金の使い道を監視することであるはずで、「格差社会」とか、「政治とカネ」とか、中身のない言葉で大衆を扇動することではないはずなんだけど、おそらく新聞記者などという賤業を志す薄汚い連中は、大衆扇動中毒みたいなやつらばっかりで、とにかく扇動的なことが書きたくてしょうがないのだろう。
 それで、ちょっと実地調査をすれば嘘だと分かるデマでも、扇情的なネタでありさえすれば、よだれを垂らしてむしゃぶりつくのだろう。
 そんなでたらめを32年間も放置しといて、「歴史的事実は変わらない」って、ふざけたことぬかしてんじゃねぇぞ。
 虚偽報道を認めながら謝罪もしないで、批判が激しくなると、「最近の朝日新聞バッシングは異常だ」とか。高遠菜穂子さんや河野義行さんをはじめ、いままで、どれだけ個人攻撃してきたんだよ。
 現にこないだも、リケンの何とかいう人、自殺に追い込んでるじゃないか。それが、マスコミのいつものやり方なのに、それが自分に向いたら「ひどすぎる」って、ホント、おれ、20年前に新聞読むのやめてよかったぁ。
 で、話を中澤弘光にもどすと、この人は、日本画家の土田麦僊と並んで、洋画での「舞妓の画家」として有名だったらしいが、土田麦僊の舞妓なんかより、中澤弘光のほうがはるかによい。
 土田麦僊は甲斐庄楠音の絵をけちょんけちょんにけなして、画壇から抹殺した奴なんでおれはきらいだけど、それは抜きにしても、中澤弘光の方がよい。

 「しげ子の顔」という絵があるんだけど、これがいい絵だ。しげ子という人の顔なんだろう。ただ、顔のアップなんだけど、すこし斜視ぎみで、船越桂の好みかというと、それよりも、耶蘇くささがなくて、その分、世の中を知っている感じがある。「無垢」とか「無我」とかご冗談でしょってかんじ。
 それで、そのあと、歩いて横浜美術館に行った。通りかかったという方が正しいか。横浜トリエンナーレがやってるのは知ってるし、森村泰昌がキュレーターなので、行くつもりなんだけど、もう少し涼しくなってからと思ってた。それに、その日はもう遅かったから、呼び込みの女の子にもそう言ったら、その日は(あれは三連休だったかな)、遅くまで開いてますっていうんで、横浜美術館の中だけでも、行きがけの駄賃ということもあるし、観ていくことにした。後日裏を返すということで。
 個々には面白いものもあったけど、正直言って、‘アート’は中澤弘光の絵より退屈だと思った。
 ‘ターン、ターン’ていう音がする部屋があって、真ん中が鏡になってる、片方の部屋はテニスコートみたい、だから、その音はラリーの音に聞こえる、鏡の裏に回ると、裁判所みたい、それで、その音は、裁判長の振り下ろす木槌の音に聞こえる、テニスのコート、裁判所、英語で‘コート’って、これダジャレじゃねえか。
 これが‘アート’っていうなら、退屈だわ。
 中澤弘光の絵は、テクニックとしては黒田清輝の流れだと思う。黒田清輝は何者だったんだろうと思い返してみると、実はよく知らない。
 浴衣とか団扇とか日本髪とか、和のものを油絵で描こうとするのは、川村清雄もそうだけど、実は、チャレンジングだったんじゃないかという風に思えてきて、中澤弘光の舞妓は、そういう意味での、ある到達ではなかったかなとも思える。
 でも、あれは面白かった、釜ヶ崎かどこかのアールブリュット風の作品群。中に、「ゴミの声が聞こえる」という書があって、感じ入った。アートはいまゴミの山なんだろうな。ゴミの山。

 横浜トリエンナーレの今回のテーマ、「世界の中心に忘却の海がある」っていう、‘忘却の海’は言い換えれば‘ゴミの山’でしょう。
 ミュージアムショップにいったら、これが売ってた↓。

 「よことり」・・・、また、ダジャレかい!って、思わず買ってしまいましたけどね。