「グランドフィナーレ」

knockeye2016-04-25

 最近に観た映画では「ルーム」、「スポットライト」、「グランドフィナーレ」が良かった。その中でどれか1本だけお薦めするとなると、「グランドフィナーレ」だろう。
 この監督のパオロ・ソレンティーノが「きっとここが帰る場所」っていう、ショーン・ペンの主演映画を監督した人だったと、観終わった後に気がついた。あれは良かった。たしか、クエンティン・タランティーノの「ヘイトフル・エイト」にもシーンが引用されていたと思う。監督目当てでなく観た映画が、2本とも良いとなれば、監督が良いのでしょう。
 そして、この映画で特に重要なのは、デヴィッド・ラングの音楽、マイケル・ケインが演じる主役の老音楽家に、英女王が指揮を熱望する、その楽曲「シンプル・ソング#3」に説得力がなければ、映画が成立しない。
 映画の舞台は、スイスアルプスの高級リゾート、トーマス・マンが『魔の山』を書いた古い保養所で、当時の面影をとどめているそう。サナトリウムというわけではなかろうが、メディカル・ツーリズムの一面もあり、老音楽家は、マネージャーでもある娘(レイチェル・ワイルズ)が、プログラムを組んだ温泉浴やマッサージに身を委ねている。
 同じリゾートには、若い頃から親交のある映画監督(ハーヴェイ・カイテル)が滞在しているが、老音楽家が英女王の懇願にさえ応えようとしないのとは対照的に、彼は今でも現役で、若いスタッフと次回作のシナリオを練っている。
 老音楽家の娘婿は、実は、この映画監督の息子なんだが、こいつが他に女を作って別れ話になり、娘もこのリゾートに滞在することになる。
 そして、「ラブ&マーシー」で、若き日のブライアン・ウィルソンを演じたポール・ダノは、当たり役のイメージにうんざりしているハリウッド俳優で、ハーヴェイ・カイテルの映画監督から出演のオファーを申し出られている様子。
 バラバラのようだけど、すごくうまい設定になっている。どのくらいうまいかというと、映画を観終わって1日たってから、「うまいな!」と気がつくくらい、うまい。この設定が、ラストの、言っちゃうけど、圧巻の音楽に収斂するとは、ちょっと気がつかないもん。
 この映画の大団円というか、大転換というか、転調のひきがねを引くのが、なんと、ジェーン・フォンダなんです。最初、後ろ姿で登場して、ナイフに歯だけ写る。その後の、ハーヴェイ・カイテルとのシーンは息を呑みます。
 ヴァイオリンはヴィクトリア・ムローヴァ、歌はスミ・ジョーだそうです。圧巻です。
グランドフィナーレ公式サイト