「SUPER FOLK SONG」

knockeye2017-01-12

 なんか知らないけど「SUPER FOLK SONG」っていう、矢野顕子のレコーディングを延々と映した映画、しかも、モノクロで。
 びっくりしたけど、全部弾き語り。ピアノと唄を別どりじゃないのね。しかも、一発どり。何曲もとって、良いとこをつなぐって事をしてない。ただただ矢野顕子の才能に圧倒されるっつう映画です。
 でも、あまりまえだけど、いろんなプロの人たちがいて、はじめて、天才の仕事も陽の目を見るってこともわかります。谷川俊太郎とか、糸井重里とか、鈴木慶一とか、宮沢和史とか、詩や曲を提供したひとももちろん、もっと裏方の人も。
 とつぜん、弾くのをやめて、
「あ、やっぱり、ここちょっとおかしいですね、調律の人お願いします」
とか言うわけですよ。
 そしたら、調律の人がすっと出てきて、なんかやって、
「これでどうでしょう?」
「あ、よくなりました」
とか。
 見てるこっちは、「さっきとなんか違う?」みたいな感じ。なんか松本人志のコント見てるような気がしてきてしまうんだけど、ふだんはそういうシーンって目に触れないことなんだけど、全てのものづくりの現場で、そういうことが行われてるんだと思います。その結果のところだけ見て、そのプロセスに想いを馳せられないのは、改めて、貧しくて下品だと思った。
 週刊エコノミストの12月27日号に、パフュームの振り付けをしてるMIKIKOって人のインタビューが載ってる。リオ五輪の閉会式を演出した裏話がすごく面白かった。
 パフュームとBABY METALの裏側にこういうプロがいるってのが、面白いと思っちゃう。さっきの矢野顕子の調律の人じゃないけど、素人は分からないけど、プロは狙い定めて正確なシュートを打ってるわけよ。
 しかし、プロって何なんだろうって考えだすと、なかなか難しい。
 江川達也が「君の名は。」を「プロから見ると全然面白くない」って批判して炎上したそうなんだけど、でも、現時点で200億円稼いでるプロと、200億円稼いでる作品を面白くないっていうプロと、どっちに仕事を発注するかというと、顧客目線で見るとどっちが「プロ」かはいうまでもないと思うんだけど。
 「君の名は。」について言えば、福岡伸一が文春に書いてた記事が一番沁みましたね。東日本大震災を、今、ああいう形でファンタジーに昇華できたっていうのは、やっぱりすごいと思います。「シン・ゴジラ」も、東日本大震災を強く意識しているけれど、立ち位置が官僚側にあるのが、わたしはちょっと。「君の名は。」は、はっきりと被害者の立場で描いていて、もっと言えば、死者の立場で描いているので、ファンタジーにならざるえない。それが伝わるから、胸を打つんですよね。
 先日、泣く子も黙るキネマ旬報の年間ベストテンが発表された。キネマ旬報の視点は、鬼神も道をゆずるプロの視点なんだが、「この世界の片隅で」が一位なのは、まぁ、わかるんだが、「イレブン・ミニッツ」が、外国映画の8位って。プロは違うね。