『ジェイン・ジェイコブズ ー ニューヨーク都市計画革命ー』

 アミュー厚木映画ドットコムシネマが閉館するのは残念だ。
 いわゆる名画座つうのか、ロードショーじゃない、ちょっとマニアックな映画とか、見逃した映画とか、この辺りで観ようとすると、近くて便利だった。
 ここが出来るまでは何と言ってもジャック&ベティだった。あそこは企画も作品の選択もよくて、最高なんだが、人気が出すぎて、地理的に微妙に行きづらいところに住んでいるので、訪ねたものの、満席で見られなかったことが二度ほどあって、黄金町まで行って無駄足はショックが大きいので、それだと、遠くても、ネットで予約できる東京の映画館をはしごってことになってきていた。
 アミュー厚木映画ドットコムシネマは、ジャック&ベティと同じく予約はできないものの、私にとっては地の利があり、それに、満席ってことも、まず、なかったので(それがいけなかったのかな?)、けっこう重宝してた。
 たしかに、そんなに客の入りは良くなかったけど、映画ドットコムが運営してるんだから、税金対策か道楽かだろうと思っていたが、違ったのかも。
 何しろ、神奈川に暮らし始めてから、厚木の映画館が潰れるのはふたつ目。
 そういえば、書かなかったけど、その映画ドットコムシネマで『ジェイン・ジェイコブズ ー ニューヨーク都市計画革命ー』を観た。

アメリカ大都市の死と生

アメリカ大都市の死と生

 『アメリカ 大都市の死と生』という本を書いた人で、1960年代、アメリカ全土で進められていた都市の再開発から、ブルックリンを守った。
 この映画を観ていてショックだったのは、ル・コルビジュエが否定的に、までいうと言い過ぎか、でも、控えめに言っても、懐疑的に捉えられていたことで、アメリカ全土でスラム街を一掃して、区画整理を推し進めたロバート・モーゼスが、最終的には巨大な利権に動機が移ったとしても、その出発点には、モダニズム建築の考え方があったには違いない。
 ル・コルビジュエのユニテ・ダビタシオンは、戦火に荒廃したフランスの復興住宅であったという点は、1960年代のアメリカとは違う。
 だから、ル・コルビジュエに責任を持たせるわけにいかないが、ジェイン・ジェイコブズのようなオピニオンリーダーを持たず、そのためか、また、住民の意識の違いだったのかわからないが、ロバート・モーゼスの計画のままに、再開発が進められたデトロイトや、その他の地方都市が、ゴーストタウン化している現状を見れば、歴史の審判はすでに下っていると言うしかない。
 しかし、問題は、その審判の詳細で、何が間違っていたのかは、けっこう人間力が試される問いだと思った。
 スラム街を一掃して、住民には、新たな低所得者住宅を提供する。一見、合理的で、リベラルにさえ見える、その政策が街を荒廃させただけだったのは、考えさせられた。
 『私はあなたのニグロではない』のジェームズ・ボールドウィンが、低所得者住宅は、結局のところ、隔離政策にすぎなかったと語っていた。