3年前のやまゆり園事件の犯人と同じ主張をしているように聞こえるテレビの人たち

 5月28日、登戸で小学生が殺される事件が起きた。

 また同日、立川志らくが、登戸の殺人犯について「死にたいなら1人で死んでくれよって。本当にそういう人は。なんで子どもの弱いそういうこところに飛び込んでくるんだ。信じられないですね」とテレビで発言して物議をかもした。
 
 6月2日、立川志らくの発言について、松本人志が「僕は、人間が生まれてくる中でどうしても不良品って何万個に1個、絶対これはしょうがないと思うんですよね」「それを何十万個、何百万個に1つぐらいに減らすことは、できるのかなあって、みんなの努力で。正直、こういう人たちはいますから絶対数。もうその人たち同士でやりあってほしいですけどね」と発言した。

 6月3日、東京都練馬区に住む、元農水事務次官の76歳の男性が、44歳になるひきこもりの息子を包丁で刺して殺した。「川崎市の20人殺傷事件を知り、長男も人に危害を加えるかもしれないと思った」と供述しているらしい。

 この容疑者が送検されるときの映像を見て、小倉智昭が「何か自分がホッとしたような表情に見えるんですよ。それは人様に迷惑をかけないで済んだというような感情の表れなのかな。いろいろなことと結びつけてしまうので、勝手にそういう風に見えてるのかもわからないけど」と発言したそうである。

 3年前に、やまゆり園で障碍者19人を殺害した容疑者の優性思想を思わせる発言は衝撃的だったはずなんだが、ワイドショーのコメンテーターのこれら一連の発言は、結局、あのときの容疑者と同じで、異質なものは排除しろと言ってるように聞こえる。
 特に、松本人志の発言は、やまゆり園事件の容疑者がした発言とほとんど同じに聞こえるし、小倉智昭の発言にいいたっては、たったいまわが子を殺した親が「ほっとした顔に見える」とは、いったい何が言いたいのか、考え始めると、グロテスクなことになりそう。

 日経新聞によると 登戸の事件が起きた同じ日に、仙台地検不妊手術を強制した国に賠償を求めた訴訟で「旧優生保護法違憲」という判決が下った。が、賠償請求については、すでに請求権が失われているとして棄却した。原告側は、国が長年にわたって救済の立法措置を怠ったとも主張していたが、「立法措置をとることが必要不可欠であることが明白だったとはいえない」として、中島基至裁判長は、国の対応は違法とはいえないと結論づけた。

 こう見てくると、日本人は優性思想を是としているのかといぶかしくなる。これは、話が違うようだけれども、たとえば、日本会議なんかが、どうしても女性天皇を認めようとせず、過去に女性の天皇はいたものの、それはあくまで男系だったと、徹底的に遺伝にこだわる態度とも相通ずる。
 福岡伸一が書いていたが、そもそも有性生殖は遺伝子をシャッフルすることに意味があるので、神武天皇のY遺伝子にこだわる意味は全くない。科学的に無意味なのに、いかにも科学的な主張であるかのように、まるで神武天皇のY遺伝子を、近代科学が発見したあらたな神器のように敬っている態度は、科学的でもないし、伝統的でもない。ひたすらグロテスクなのである。